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7-4

二人は図書係に頼んでおいた本の紛失結果を聞きに行きました。今さらですが、ジャスパーが声のトーンを落として訊ねます。

「昨日の件、調べてくれましたか?」

「まだ確認している途中です。あまりに図書の数が膨大なものでして、」

「そうですか……」

「それより、昨晩も本が散乱していたんです」

「本当ですか⁉」

「はい。そのままにしてあるので。見てもらえますか?」


図書係に連れられて案内されたのはやはり図書室の一番奥。例の窓がある場所です。長テーブルの上には数冊の本が無造作に散らばっていました。すぐそばには『触らないように!』と張り紙がされています。

そのテーブルに着いて、テオは今日も一人で本を読んでいました。気を遣ったのか一番端っこにいます。朝日が軽く手を振ると、微笑んでくれました。


図書係の人が説明します。

「今朝この本がここに置かれていたんです。昨日は帰る前に誰もいない事は確認しましたし、本が出ていない事も確認してました」

「このテーブルに置かれていたんですか?床に散らばっていたんじゃなく?」

「ハイ。あったままにしてあります」

「そうですか……ご苦労様でした。引き続き無くなっている本がないか確認作業の方、お願いします」


図書係が行ってしまってから朝日は聞きました。

「お兄様、本当にフライングブックなのでしょうか?」

そこにある本はどれも古そうな魔導書ばかりです。

「フフ、魔法と幽霊ではそもそも根本的に違うと言ったのはキミだよ?しかし床に散らばっていなかったとなると、どうやら僕のトリックは本当に見当違いだったらしい」

テーブルと本棚までは人が通れる幅があります。ただ糸で引っ張っただけでは、本は床に散乱するはずです。

「けど、この場所には何か意味があるようだね。これで3回ともこの窓の前で事件は起こっているのだから」

「やはり窃盗事件なのでしょうか?あの窓だけ開くことは出来ますでしょう?格子を外すことが出来れば侵入も出来そうですわ。本が置かれていたのは品定めしていたのではありません?」

「もし窃盗だとしたら、監督生である僕の仕事ではなくなる。学校に報告するだけさ。確認作業が終わるまで何とも言えないが……」


考え込んでいたジャスパーは急に顔を上げ、今頃気が付いたかのようにわざとらしく言いました。

「テオ!キミは本当に毎日、図書室に通っていたんだね!」

面倒くさそうな顔がこちらに向きます。

「お前のせいで、今日もまた曇ってる」

「秋は終わった様だ。これから冬の間中こんな天気だろうよ」

「寒くなりましたものね」

「昨日は曇っていたが、夜は晴れて月が綺麗だったよ。窓から差し込む月明かりが、とても明るく幻想的だった。その光の元で詩でも書こうと思ったくらいだよ」

「あら、お兄様ったらロマンチストですのね。知ってます?冬に月が綺麗だと、次の日の朝は濃霧だと言いますわ。今朝は霧が出ていたでしょう?放射冷却現象によるものなんですって」

「キミは随分、現実的な思考をしているね」

「わたくし、ここで読んだ本で覚えましたのよ」


ジャスパーの鋭い視線がテオに向けられます。彼は聞いていなかったかのように、本に視線を落としたままです。

「妹よ、捜査に戻ろうか……どうやって犯人は本をテーブルの上に乗せたかだよ」

考え込む二人を鼻で笑って、テオが言います。

「こんな方法はどうだ?」

彼は持っていた本をテーブルの上に置きました。そして指でそっと触れたのです。すると本はスーッとテーブルの上を滑ってメイベールの目の前で止まったではありませんか。

「すごい!どうやって動かしましたの⁉」

静かに、と明星が唇に人差し指を当てます。朝日は手で口を押えました。


「その本を触ってごらん」

朝日が触れようとした瞬間、バチっと静電気が飛びました。

「いたっ!」

痛がる彼女を明星が笑っています。

「フフ、すまない。ジャスパーに触らせるべきだったな」

「おい、」

「なんですの?今の」

「本に静電気を帯電させておいたんだ。そこへ反発する電気を流すと、今の様に物が動かせる。逆に引き寄せる事だって出来る」

「引き寄せる事も?やって見せてください」

彼は困り顔になりました。

「これは魔力によるものなんだ。触れる方ならいいが、離れた物を引き寄せるのは難しい。ここには結界が張られているから」

ジャスパーが捕捉します。

「さっき教えた魔力操作だよ。体の外に魔力を流せばそれは魔法だ。けれど呪文が確立している魔法と違って、魔力操作はただ魔力を操作するものだから、結界の中ではほとんど使えない。相当な魔力量を持っていれば別だが……そういえば、テオの魔法適性は雷だったか」

「ああ、そうだ」

「そうか、そうか、」

ジャスパーがテオの側に行き、その肩に手をかけました。

「キミが犯人だったのか」

「まさか!おにぃ……」

朝日はまた手で口を押えました。テオの中身は明星なのです。彼が犯人などありえません。

「身近な人物が犯人だったという話は推理小説の王道展開だよ」


テオが余裕で笑います。

「フッ、今お前が言ったんだぞ?結界の中では使えないと」

「図書室の中ではね」

ジャスパーが窓を指さします。

「窓の外からなら使えるんじゃないか?ちょっと来てもらおうか」


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