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7-2

カラーン、カラーン、カラーン、


「はぁーーーーーーーっ」

授業終了の鐘の音を聞き、朝日はゆっくり静かに息を吐きました。授業中に睡魔に襲われ、寝ないようにお腹に力を籠めて耐えていたのです。彼女は最前列のど真ん中の席に座っているので、先生が目の前に居て寝る事は出来ません。何より、ほんの少しウトウトしただけで後ろにいるクラスメイトには、すぐにバレてしまいます。そんな失態、ケステル家の令嬢であるメイベールには許されません。

しかし、今日はやけに眠たいのです。お嬢様の方も同じらしく、体を任せて授業を受けてもらう事は出来ませんでした。


「大丈夫ですか?」

となりのアイラが心配そうに声をかけてきました。彼女には様子がおかしいのが分かっていたのでしょう。

「うん。ちょっと眠いだけ……最近寒くなってきたから、朝も起きられなくて」

「メイベールさん、図書館でずっと本を読んでたから疲れてるんじゃないですか?」

「あぁ、きっとそれだ」

「気分転換にお茶を飲みに行きましょう」


食堂に入るとジャスパーの後ろ姿を見つけました。

(そうだ!)

駆け寄って手を取ります。

「お兄ちゃん、魔力わけて」

彼は驚く事も、笑顔を見せる事もなく、表情を崩さず言いました。

「メイベール、世間体というものを考えなさい。」

そこは食堂、周りにはティータイムに集まる生徒達がいます。兄は生徒達の模範となるべき監督生であり、それ以前に貴族の中でも公爵という最高位の立場は他の貴族から敬意を払われる存在です。敬われるにはそれにふさわしい毅然とした態度が求められます。それは妹であるメイベールにもです。

お嬢様が『お兄ちゃん』と呼んで甘えたのは、ひと月前のアノ時のみです。彼女も普段の生活では兄の事を敬い、ケステル家次期当主として立てているのでした。


比べて朝日の中のジャスパー像は、アナドリに出てくる優しい兄そのままです。普段から冗談を言って楽しませてくれる気遣いの出来る存在。少し甘え過ぎていたのかもしれません。

(兄妹で手を繋ぐくらい……)

怒らせてしまったのかと思いましたが、つないだ手からは物凄い勢いで魔力が注がれました。あっという間に眠気は吹き飛び、活力がみなぎります。やはり兄は妹に優しいのです。

「ありがと、お兄ちゃん」

笑いかけると今度はいつもの笑顔を見せてくれました。

「しょうがない妹だ……さあ、紅茶を飲みに行こう」


ティータイムにいつものメンバーが揃いました。普段ならジャスパーが楽しいネタを話してくれるのですか、珍しく彼はため息を吐きました。

「ハァ、聞いておくれ妹よ」

「何でしょう?お兄様」

「どうやら僕は探偵に向いていないらしい」

「どういう事ですか?」

「昨日の推理は間違っていたって事さ」

彼が言うにはイタズラしすぎないように、例の友人をたしなめたのだそう。ところが彼女は何のことかさっぱり分からないと、イタズラの実行を否定したというのです。


「それは、認めてしまったら本当に犯人という事になってしまうからではありませんの?」

「いや、そうじゃない。話した感じでは本当にイタズラなどしていない様なんだ」

ルイスが頷きます。

「彼女は先生を手伝っているだけあって、真面目な生徒だ。イタズラを面白がってする様な性格には思えないな」

「そうだね。僕の思慮が足りなかったよ。彼女は優秀な成績を認められ、奨学金を受け取って進学したんだ。先生達の信頼を損なう事はしないだろう」

「では、他に犯人がいると?」

「そういう事になるね。メイベール、今日も探偵ごっこに付き合ってくれるかい?」

朝日は返事をためらいました。お嬢様は調べものに時間を取りたいはずです。けれど、

「もちろんです。お兄様」

こちらが気を使う間もなく、お嬢様は二つ返事で了承してしまいました。兄の頼みは断れないのでしょう。


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