6-4
図書室の一番奥まで来ると、いつものようにテオが一人座って本を読んでいました。それを見つけジャスパーが声をかけます。
「こんな所にキミがいるなんて意外だなぁ。通りで昨日まで快晴だったのが急に曇った訳だ」
「なら曇ったのはお前のせいだ。カードで遊んでばかりの誰かと違ってオレはいつもここに来ている」
テオが鼻で笑ったので、すぐさま返します。
「もしかして本を散らかして帰ったのはキミじゃないだろうね?」
「オレはメイベールに片付けるよう注意してあげたくらいだぞ」
ジャスパーの眉が上がりました。
「メイベール……どういうことだい?テオといつもここで会っているのか?」
「え?……ええ、統治際の準備のために色々調べてましたの。そ、それより真相を突きとめないと!」
「僕は聞きたくない真相を聞かされたよ。ハァ、」
朝日が明星を睨むと、そっぽを向かれてしまいました。
話にあった窓へと近づきます。
けれど、メイベールの背丈では目線が合わず、外の景色が見えません。見上げた空が窓の枠に見えるだけです。
「ここの窓は随分高い位置にありますのね」
図書室の他の窓はどれも腰の高さ位にあります。壁が分厚いので窓辺はくりぬいたようになっていて、腰掛けるのにちょうどいいのです。読書をする特等席なのでどの窓も生徒が座って読書する姿を見かけていました。
ジャスパーが隣に並びます。彼の身長でもようやく頭の先が出るくらいです。
「これは高窓というものだよ。換気目的のためにあるはずだ」
テオも並びます。背の高いテオでようやく目が少し外を覗きました。
「テオ様、どうなっています?」
「換気の為といっても、格子が邪魔で開けられそうにないな」
「きっと格子は防犯のために後から付けられたんだろう」
見上げた朝日にも格子は見えていました。その隙間を人が通るのは無理そうです。
「そうですわ!もしかしたら本を外に持ち出すのが目的だったのではありません?」
朝日は椅子を引っ張り出し踏み台にして登ると、窓を確認しました。しかし、窓は押し出して開けるタイプになっていて、格子が邪魔で少ししか開きません。それに格子は縦に張られているので、とても本が通る隙間などありませんでした。
ジャスパーが唸ります。
「んー、ここの生徒は貴族だ。本の為に盗みを働くとは思えないな。それに図書室にあるのは誰でも読むことの出来る本ばかりだよ。希少性は無い」
「あら、お兄様は先ほど係の人に窃盗かもしれないと申していたではありませんか」
「あれは方便だよ。最初から窃盗だとは思っていなかった。そもそも犯人を捕まえるのなら、調べている事を秘密にして待ち伏せした方がいい」
「では、いたずらだと?わたくしも窃盗だとは思っておりませんわ。ただ、いたずらには思えませんの。ここの本は貸出禁止なのです。どうしても本の続きが読みたくて持ち出したかったのじゃありません?読み終わった後コッソリ返せばいいのです」
明星も推理に加わります。
「コッソリというのなら、制服の下にでも隠して出てきた方が簡単じゃないか?」
ジャスパーが反論します。
「ここだけの話だが、図書館の本には、ごく少量の魔力が付与されている。その本を持って正面の扉をくぐろうとすると、弾かれるそうだよ。扉に結界が張られているんだ」
ジャスパーがにっこり笑って言います。
「メイベール、試してはいけないよ。見つかったら問答無用で特別指導室送りだからね」
「試しません!子供じゃありませんのよ!」
ジャスパーが唇に人差し指を当てます。
「しーっ……」
まるで小さな子を扱うようです。
「もーっ」
朝日が椅子から降りようとすると、ジャスパーと明星が同時に手を差し出しました。
「テーオー、キミは読書の続きでもしたらどうだい?」
妹の事となるとジャスパーが少し面倒なのは承知しているので、明星はあっさり手を引きました。
手を取ったジャスパーが聞きます。
「次はどうする?」
「え、ええ……そうですわね。一応外からも図書館を見ておきます?」
「そうだね。図書館をぐるりと二人で散歩しようか」
「だったら雨に降られないように気を付けるんだな」
明星は笑って読書に戻っていきました。




