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5-9

生徒達が寝静まり、夜の静寂が広がる中、月明かりが図書館の窓から差し込んでいた。

そこに人影はない。ただ静かに本たちが存在している。


ズー……バタン!


その静けさを破る物音が館内に響いた。

誰もいないはずの図書室で棚から本が落ちた。


パタ、パタ、パタ、


落ちた本が勝手に浮かび上がる。

ページが開かれた姿で羽ばたき、空中を浮遊する。


ズー……バタン!

パタ、パタ、パタ、


棚の間を蝶のように飛び回る本たち。それは生を与えられたように、軽やかに空中を舞った。ページをひらひらと揺らし、差し込む月明かりに蜜を求めるかの如く窓へ吸い寄せられていく。月光に照らされ文字が輝いた。


図書室には誰もいない……


◇◇◇


朝日は次の日の放課後も図書館へ向かいました。いえ、やる気になっているお嬢様の体が勝手に動いて行くのです。

昨日と同じように明星の隣に座ります。

「今日も調べものか?」

「うん……なーんか、水蒸気爆発を利用して威力を上げようとしてるみたい……ふわぁぁぁあ」

朝日は大きなあくびをしました。明星が笑っています。

「おにぃ、図書室って眠くならない?」

「そうか?集中して読んでると、眠気は感じないけどな」

「アタシ、ちょっと寝てるからメイベールに話しかけないでね」

「フフ、分かった」


体の主導権を得たメイベールは今日も本を読み漁りました。

しかし、文字だけではどうしても理解が及ばない部分があります。それに魔導書は膨大にあるのです。統治祭まであまり日にちはありませんし、彼女は少し焦りを感じ始めていました。


ツン、ツン、


魔導書を読みふけるメイベールの肩を突っつく人物が。そこに居たのはテオです。調べものを邪魔された彼女の眉間にシワが寄りました。

「何ですの?テオ様」

彼が意外そうな表情を浮かべます。少し間を置いて、

「そろそろ夕食の時間だ。この辺にしておいてはどうだろう?メイベール嬢」

「お心遣いは結構です。わたくしはまだ調べものがありますの。あなたはそんなところに立っていないで、どうぞお先に。」

彼はフッと笑いました。

「あさひ」

兄の呼びかけに朝日はハッと目覚めました。ビクンと体が脈打ってから、辺りをきょろきょろと見回します。

「おにぃ……アタシ今、完全に寝てた。ごめん」

「フフ、みたいだな……」

明星の顔は少し寂しそうです。

「何かあった?」

「いや、ちょっと話しただけだ。メイベールはやっぱりテオの事、嫌ってるんだな、」

「嫌いというか……たぶん、このお嬢様は全部ケステル家の為に行動してるんだと思う。お兄ちゃんの、ジャスパーの為に」


「そうか……夕飯の時間だ。行こう」

「うん」

席を立った朝日に明星が注意します。

「本を元の位置に戻しておけよ」

彼が指さした先には柱に張り紙がされていました。

『本は元に戻す!守らない生徒は図書室の利用を禁止します』

「昨日はそんな張り紙なかったんだけどな」

本を棚へ納め、夕食に向かいました。


二人は気付いていません……窓の外から様子をうかがう、その視線に。


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