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5-7

資料が残っていない中、戦いの地を推測するのは困難であった。なにせすべてが跡形も無く吹き飛んだのだから。ちなみに先述の日記であるが、カンロ中央教会に保管されていた物で、実際に日記を書いた司祭が住んでいた教会の場所までは分からない。衝撃音が聞こえたと書かれていることから爆発に巻き込まれない範囲、そして音が届く限界の距離、半径10km圏内 (雷の音と比較)に教会は建っていたと思われる。


当時、カンロとセントランドの軍事境界線は南北に連なる山々、キムル連峰だったことは間違いない。防衛のため要塞を築くなら山と山の谷間に築くだろうが、キムル連峰の山は北へ行くほど標高が徐々に高くなっていく。南の方はなだらかに連続する丘といっていいものだ。西のカンロ国へ向かうのにわざわざ高い山を越えようとは思わない。交通の便が良い南側を通ることになる。そのため丘の頂に要塞を築いてもおかしくはないのだ。それが戦場を特定する事を困難にした。そこにはいくつもの丘が存在しているのだから。

しかし、私は諦めず何年もかけて探し続けた。そして見つけたのだ。ある丘の頂だけ湿地の様に湿っている場所を。丘の上なのにそこには水があるのだ。降った雨が溜まっているのだろう。なぜ流れ落ちず溜まっているのか?それはクレーターが出来ていたからだ。ケント1世の魔法による爆発で開けられた穴が!


パラパラとめくります。


私は知り合いの高名な魔導士に協力を依頼した。断っておくが、その人は信用に値する人物で魔導士の派閥争いとは無縁である。依頼内容もケント1世の事は伏せ、純粋に魔法の威力を調べる為のものだと言ってある。

私はその人物に火の魔法の中でも最高威力を誇るヴァーミリオン・ボムを見せてもらう事にした。私自身も魔導士ではあるが、恥ずかしながらボムを撃てるほどの才能は持ち合わせていない。それに公平を期す為にも第三者に協力してもらう方がいいだろう。

安全を確保したうえでボムを放ってもらったのだが、思った程では無かった。もちろん、どの火球よりも威力は凄まじかったのだが、丘に築かれた街を跡形もなく消し去るほどではないのだ。この点がケント1世の魔力量に疑念を抱かせ、英雄を貶めたい者どもに隙を与える事になっているのだろう。


パラパラとめくります。


私は先述の日記を読み返し、気が付いた。その日は土砂降りだったのである。私の様に魔法の才能に恵まれなかった者でも雨の中で火球を放とうとすればどうなるかぐらい簡単に分かる。すぐに火は消えてしまうだろう。それどころか雨による水のイメージに引っ張られ、放つことすらかなわないはずだ。水球を放った方が理にかなっている。

それでも土砂降りの中、ケント1世は火球を放ったのである。勘違いしないで欲しい。雨が降っていても、火球を放てる事が凄いのではない。なぜ雨の中、放った火球が街を吹き飛ばしたかに注目して欲しい。火と水。その相反する性質が合わさる時、とてつもない威力が生まれるのだ。


ペラリとページをめくります。


水蒸気爆発という現象を知っているだろうか?火山活動の際に見られる現象だ。高温のマグマに地下水が流れ込むと水は蒸発して水蒸気となる。この水蒸気はとてつもない爆発力を持っているのだ。身近な例ではヤカンを火にかけ沸騰すると、蓋が水蒸気によって持ちあがる。重い金属を軽い水蒸気が持ち上げる。水から水蒸気に変わる時、大きな力が生まれているからだ。

私は、かの魔導士にもう一度依頼をした。今度はヴァーミリオン・ボムを雨が降る中、放って欲しいと頼んだのだ。結果は期待通りのものとならなかった。水蒸気は発生するものの、大爆発には至らないのだ。その魔導士に助言を求めると水が一瞬で蒸発するほどの高威力でなければ爆発しないのではないかと言われた。


では、逆説的に考えれば、高威力の魔法を放ったからこそ降っていた雨と反応し、街が消し飛ぶほどの水蒸気爆発を起こしたのではなかろうか?それはつまりケント1世が絶大なる魔力を持っていた証となり得る。

ただ、ヴァーミリオン・ボム以上に高威力な火の魔法を私は知らない。


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