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その日の魔法の授業が終わると、ジョージ先生に呼びかけられました。
「メイベール嬢、もうすぐ開催される統治祭はご存じかな?」
「はい。兄から聞きましたが、バーストマスターの件でしょうか?」
「ふむ。聞いているのなら話が早い。その役目、引き受けてもらえないだろうか?」
「ハイ。喜んでお受けいたします」
「そうか。それはよかった。教授達の間でも一度メイベール嬢の実力を自分の目で確かめてみたいと言われていたのだよ」
周りで聞き耳を立てていたクラスメイトから、どよめきが起こりました。
バーストマスターといえば魔法学校の中で一番の実力者と認められた者に与えられる栄誉ある役目なのです。威信と家の期待を背負って魔法学校に入学した貴族ならば名誉あるその役目を誰もが受けたいと願うものでした。
それを入学したての1年生が務めるのですから一大事です。しかし、あの赤の公爵ケステル家のメイベール嬢が務めるのであれば納得せざるおえません。あのレディ・ボムなら。
「先生、一つお聞きしたいのですが」
「何かな?」
「兄からは全力を出しなさいと言われましたの。全力でやっては街に被害が出てしまわないかと心配なのです」
ハハハ!と笑ってジョージ先生が言います。
「毎年、祭りの日には我がリード家はえ抜きの魔導士が街全体にシールドを張るのです。もちろん私も参加します。あやまって火球が街に降り注ごうとも、受け止めてみせますからご安心を」
そう言った先生でしたが、握った手をアゴに添えると、少し考えるようなそぶりを見せて訪ねました。
「もしやメイベール嬢はこの前の魔法適性を調べる際に手を抜いておられたのかな?」
「いえ、そのような事はございません。全力でいたしました。けれどあの時は結界の中でしたし、途中で先生が止めてしまわれたじゃありませんか。だからどれだけの威力があるのか、わたくしも分からないのです」
「そうですか……」
今度はクラスがざわつきます。
クラスメイト達はあの時、彼女の実力をまざまざと見せつけられたのです。メイベールの作り出した火球はとてつもなく大きく、それに比べ自分が全力を振り絞って練りだした魔法が如何に小さかったか……思い知らされて皆、口を閉ざしたのです。それなのに彼女はまだ全力が分からないと応えたのです。レディ・ボム恐るべし!
クラスメイト達の関心はもう一人の恐怖の対象、アイラへと向けられていました。ルイス殿下と一緒に居た事から雷公女とあだ名が付いた彼女は、公女の名がが示す王族どころか、貴族でもないのです。なのに魔力量ときたらクラスメイトの誰をも圧倒していました。レディ・ボムの隣で平然と肩を並べていられるのも納得です。
もしバーストマスターの件でアイラが異を唱えメイベールと対立する事になったのなら、どちらに付けばいいのか?平和な世となって久しいこの時代に、貴族の派閥争いが勃発しかねない事態でした。
先生の視線が隣に座って静かに聞いていたアイラへと向けられます。
「アイラ嬢、念のため祭りの日は私と共にサポートにあたってはもらえないだろうか?」
「私がですか?」
先生は頷き、更に付け加えます。
「エミリー様にも手伝ってもらいましょう。私達3人で止められないようであれば、その時は街が吹き飛ぶだけです。ハハハ!」
先生は笑いながら去って行ってしまいました。
(今、なんて?)
朝日は心配になってきましたが、メイベールお嬢様の体は吹っ切れたかのようにやる気がみなぎっています。
対照的に周りにいたクラスメイト達は派閥争いに発展しず助かったと、胸をなでおろしたのでした。




