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3-2

「ブリトン王国はかつて三つの国に分かれていました。中央に位置するセントランド、西に位置するカンロ、北に位置するスコー。それぞれの国の王が覇権を争う暗黒の時代が長く続いたのです。それに終止符を打ったのが今から250年程前、セントランドに誕生したケント1世です。のちに統治王と呼ばれることになる彼は、絶大なる魔力をもって戦況を一変させました。まず西に位置するカンロ王国を瞬く間に打ち破って併合すると、国同士による三すくみの構図は崩れました。後方の憂いが無くなった事でセントランドは勢いに乗ります。しかし北の地にあるスコーは山岳地帯が天然の要塞と化し、落とすのは容易でありません。そこで彼は策を講じます。当時、スコーとセントランドの境界には長い城壁が張り巡らされていました。そこに万を超える兵士を集結させると、ケント1世はその絶大なる魔力で巨大な火球を夜空に打ち上げたのです。火球はまるで昼間の様に辺りを照らし、その光は遠くスコー王の城からでも見えたといいます。兵士たちはその光の元、祝杯をあげました。これで長く続いた戦争も終わると。セントランドの兵士が戦う前から祝杯上げていると聞いたスコー国王は恐れおののいたといいます。スコー王は降伏の道を選びました。セントランドと和睦の証として娘を差し出し、ケント1世と婚姻関係を結んだのです。これにより戦国の世を終わらせたケント1世は三国それぞれの王を兼任するという形でブリトン連合王国を創設、統治することとなりました」


朝日は教壇に立つ先生の話を聞きながらワクワクしていました。いま教えてもらっている歴史の授業はゲームでは語られない詳細な設定の様なものです。オタクが好きな分野だけは、やたらと詳しいのが納得出来ました。朝日にとってこれは授業というよりゲームの延長で楽しいのです。

(ケント1世かぁ、へーぇ)

先生から渡されたプリントに重要な個所を書き込んでいきます。


この学校の授業は日本とはやり方が少し違っています。先生が教科書を読み、生徒はそれを聞くだけ。板書はほとんどありません。生徒一人一人に教科書もありません。あるのは最初に配られるプリントのみ。そこには質問が記されており、空欄になっている個所を先生の話から読み取って埋めていきます。そのプリントが授業を重ねるごとに積み重なって、自分の教科書となるのです。

日本の様に教科書が沢山用意され、全てを書き記してくれているのとは異なります。自分から聴く姿勢を持っていないと、ついていけません。


メイベールの知識を受け継いでいる朝日にとって、授業は苦労なくこなせるものでした。メイベールには幼いころから家庭教師が付き、一般教養は既に身についているのです。それはチートみたいなもので、先生が語る話は頭の中の知識と答え合わせをしている様なもの。それが優越感を産み、朝日には楽しくてしょうがありません。


アイラの方をチラリと見ると、彼女は一言一句逃さない勢いでメモを取っていました。きっと真面目な性格なのでしょう。


カラーン、カラーン、カラーン

鐘が鳴り、授業の終了を告げました。

「では、ここまで。分からないところがあれば聞きに来るように」

先生はすんなり引き上げていきます。1限目の授業もそうでしたが、先生と生徒の関わりはとても淡白です。授業を始める前に自己紹介や余談など無く、いきなり教科書を読み始めたのには、朝日も面食らいました。

そもそも担任の先生というものがいません。生徒は自分の事は自分でしなくてはならず、自主性が求められるのです。それは貴族生活に慣れた子供達を教育するという意味も持っているのでした。


「あ、そうそう」

と、帰ろうとしていた先生が出口で足を止めました。

「2限目の後はティータイムとなっています。食堂にはビスケットなども用意されていますから各自、自由に休憩を取るように」

一応、新入生だから伝えておくよう頼まれていたのか、先生はそれだけ言うと去っていきました。


(ティータイムなんてあるの⁉さすが、お貴族様)

お菓子を食べられるのが嬉しい朝日。それに食堂へ生徒が集まるのなら明星あきとにも会えるかもしれません。彼女は早速席を立ちました。

立ってしまってから気になって聞きます。

「アイラさんはどうされます?」

ドキドキしながら聞きました。出来ればこの子と普段は距離を取っておきたいのです。一緒に居ればいつ悪役令嬢と化してしまうのか気が気じゃありません。テオのルートを進める為にも悪役に徹する必要が出てくるでしょうが、それには心の準備というものがいるのです。


アイラは嬉しそうに笑って応えました。

「一緒に行っていいんですか?」

(一緒に行くとは言ってないんだけど……)

笑顔を向けて言われたら断ることなどできません。二人は一緒に食堂へ向かいました。

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