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2-8

その後、パーティーは滞りなく行われました。

途中のハプニングを穴埋めするように、ジャスパーは参加者に声をかけて回り気を配りました。「妹はおっちょこちょいなんだ」と、ケステル家の子息自らが言う事で和やかな雰囲気になっていきます。

着替えてきたルイスもパーティーを盛り上げようとしました。ダンスになかなか誘われない、いわゆる『壁の花』と呼ばれるような奥ゆかしい令嬢たちへ積極的に声をかけたのです。皇太子がダンスに誘ってくれたと彼女達は喜び、周りもはやし立てます。ルイスはどんな相手でも華麗にリードし会場を沸かせました。


ジャスパーが「まったく、お転婆なのは昔から変わらないな。そんなところが可愛いんだが」と、メイベールが気落ちしない様に笑いかけてくれました。こういう風に昔から気を遣ってくれていたんだろうなと、この世界の兄に感謝しました。

ルイスは「まさかアイラ譲にダンスを断られるとは思ってなかったんだ。皇太子としておごりがあったようだ。あの場でキミがハプニングを起こしてくれて、私の方が助けられたくらいだよ。ありがとう」と言ってくれました。位が高いにもかかわらず、横柄な態度をとる事のない彼の包容力にメイベールの方こそ助けられた思いです。妹の様に思っていると言ってくれた彼の言葉を嬉しく思いました。


実の兄、明星はうまくいったのか?気になってテラスを覗きに行くと、テオとアイラが手を取り合って踊っていました。お世辞にも上手とは言えないダンスです。アイラがずっと下を向いていて、足を踏まない様に気を付けているのが分かりました。踊れないと言ったのは本当だったのでしょう。

テオはそんなアイラを気遣って、ゆっくり、ゆっくりステップを踏んでいます。朝日にしてくれたようにリズムを刻んで教えてあげているようです。時折、耳元で何か言う素振りを見せると、アイラが顔を上げ笑っています。その光景に朝日は胸が締めつけられる思いでした。

(これで、いいんだ……)


盛り上がったパーティーも夕方には終わり、参加していた貴族たちが満足して帰って行きます。馬車乗り場まで見送りに行く学生も出て行き、広間は急に静かになりました。朝日は明星が戻って来るまで、片付けに追われる使用人を眺めながら待っていました。


「遅くなった」

ほどなく姿を現した明星。朝日は聞きました。

「アイラは?」

「見つからない様にコッソリ帰っていったよ。きっと事情があるんだろう」

「上手くいったみたいじゃん」

「まあな。彼女、ダンスが踊れないみたいだったから、教えてあげてたんだ。これで良かったのか?」

「うん……たぶん」

妹の様子がおかしいのに気づき明星が聞きます。

「なんだ、飲み物かけたこと気にしてるのか?」

「まあ、ね」

「王子様にかけたんだもんな。捕まるんじゃないかって心配したぞ」

「あれくらいで……」

「知らないのか?不敬罪って言うんだぞ、ああいうの」

「そうなの?でもワザとじゃないし」

「なあ、あれはワザとじゃなかったのか?」

「うん。本当はね、ゲームではアイラにかける事になってたの。でもアタシは出来なかった。おにぃ、ごめん」


明星は朝日の肩に手をかけて言いました。

「大丈夫だ。嫌だったんだろ?悪役になるのが。無理にする必要は無い」

「おにぃ……」

朝日は肩にかけられた明星の手をぎゅっと握りました。

「大丈夫か?これから寮生活が始まるんだぞ?」

ムリだと首を振ります。我がままなのは分かっていますが、自分でもどうしようもないくらい今は兄に甘えたい気分です。

「おにぃ……一緒に居て」

「無茶言うな。寮は男女で分かれてるんだ。お互い行き来は出来ないし、貴族の学校だから警備は厳重だ。授業の休み時間くらいしか会えない」

「うん……」


明星がそばに飾られていた生花から赤いバラを1本抜き取って言いました。

「オレの髪と同じ赤い色のバラだ。今夜はこれをオレの代わりに枕元に置くといい。きっと安心して眠れる」

朝日は思わず吹き出しました。

「プッ!何そのセリフ。王子様みたい」

「フッ、やっと笑ったな」

明星は朝日の結い上げまとめられた銀髪にバラを挿してあげました。

「気を張ってないと、この体は時々とんでもない事を言いだすんだ」

彼が眉間にシワを寄せます。朝日は指で押さえて揉んであげました。

「さっき、お前がダンスに誘われている時も思わず、オレの……」

明星は途中で言葉を止めてしまいました。

「ねえ!なに?それってテオが言いそうになったの?」

朝日は兄の腕に手を回し、じゃれました。

「うるさい、」

二人はじゃれあいながら寮へと帰りました。


やっぱり気心の知れた明星は頼りになる存在です。朝日の不安は吹き飛んでいました。これから始まる魔法学校の生活も、やる気が湧いてきます。

けれど……不安以外の隠している感情はより大きくなっていました。彼女は笑って誤魔化しましたが、耳はジンジンするほど兄の言葉に反応して熱くなっていました。

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