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13-5

ベッドに敷かれている毛布は薄っぺらいものでした。こんなものでは、被っていても温かくないだろうと分かりますが、これしかないのでしょうがありません。少しでも温かいようにと二人は着ていたコートと上着を脱ぎ、毛布の上にかけてからベッドに入りました。

(さ、さ、さ、さ、む、む、む、む、い、い、い、い)

体はガタガタと震えます。朝日は手で体を擦って摩擦熱で温めようとしましたが、まったく効果はありません。足先も擦り合わせていますが、かえって動く度に毛布の中の空気が抜けて中々温まりません。なにより、お腹に入れたのは冷たいミルクと少しばかりのクッキーだけなのですから、体自身がエネルギーとして体温を上げるには不十分でした。

(コレ、雪山で遭難した人が寝ると死んじゃうヤツじゃないかなぁ)


あ!と、朝日は思い出しました。火の魔力で手を温められることを。

(忘れてた、ハハ)

寒すぎると体は震えることで脂肪を燃焼させ体温を上げるのに必死なので、脳にはエネルギーが送られず認知能力は低下するのです。そもそも朝日は気付いていませんが、お嬢様が受けた極度の精神的ストレスによる自律神経の乱れと、寒さによる外的要因が合わさり、この体は軽い低体温症にかかりかけていました。笑いごとではなかったのです。

(ジャスパーお兄ちゃん、手を温める方法を教えてくれてありがとう)

震える手に集中し、魔力操作します。じんわり温まったところで体の冷えた部分を触り、温めていきます。少し温まると、また気付きました。

(手だけじゃなく、体全体を温かく出来ないのかな?)

先ほど、お嬢様は怒りで体を熱くしていたのです。同じように魔力を爆発的に膨らませれば……


何回か試しているうちに朝日でもコツを掴み体は温まってきました。

(ハァー、温かくはなったけど、コレ精神的に疲れるなぁ)

まだ日が暮れたばかりですが、朝日は疲れて眠気を感じていました。ウトウトしていたところに、耳障りな音がすることに気が付きます。それはアイラの方から聞こえてくるのでした。暗い中、目を凝らすと、しきりに毛布がモゾモゾと動いています。ベッドはそれに合わせて軋み、小刻みに打ち付ける木と木の音がキーキー耳障りに鳴っているのでした。彼女も寒さに震えているのです。しかもアイラは雷の適性なため、魔力操作で体を温める事は出来ません。


(うーん……しょうがない)

朝日は起き出しました。

「ねえ、アイラさん」

「は、はい!」

頭から毛布をかぶっていたアイラは目だけ外に出しました。

「その……嫌じゃなかったら、一緒に寝ない?変な意味じゃないよ。寒いから一緒の方が暖かいんじゃないかと思って、」

「いいんですか?」

アイラも起き出しました。

「こっちに来て」

毛布を全て朝日の方に持ってきて、二人はベッドに入りました。


「はぁ、あったかい……メイベールさんって体温、高いんですね」

「それはアタシが子供みたいだと?」

「いえっ、そんなつもりじゃあ」

「フフ、これは魔力操作で温めてるんだよ。こういう時、火の適性も悪くはないね」

「やっぱりメイベールさんと一緒にいて良かった……」

アイラは温まった事で落ち着いたのか、いつの間にか寝息を立てていました。

(アタシもアイラさんが居てくれて良かった……)

朝日も魔力操作に疲れて眠ってしまいました。


……


(ん~……さむっ!)

朝日は寒さで目を覚ましました。体は冷えていませんが、毛布から出ている頭は冷えてキンキンとします。まるでアイスクリームを一気食いしたかのようです。

(この部屋、寒すぎだよー)

ベッドの上の窓は冷たい海風が当たり、ガタガタと揺れています。そこから冷気が伝わってくるのです。そのうえ隙間風もピュー、ピュー入ってきていて、鼻先は凍った様に感覚がありません。


隣のアイラは朝日の体に手を回し、抱きつくようにして毛布の中に顔をうずめています。

(ちょっと恥ずかしいかも、)

窓の外はまだ暗いまま。日が沈んですぐベッドに入ったので、明け方だとは思えません。

(今、何時だろう?時計ないのかな?)

早起きしたところで何かできるわけでもなしと、朝日はもう少し眠る事にしました。凍えないように、また魔力操作で体を温めます。

(んーーーーーーーーーーーーーーっ……ハァー)

精神をすり減らし、疲れた朝日はすぐに眠りに着きました。


……


(ん~……重いー)

またまた朝日は目を覚ましました。頭はキンキンして痛いほどです。けれどそれよりもアイラが抱きついて、その重さで目を覚ましたのです。彼女の体は半分覆いかぶさり、足まで絡めています。

(これは流石に恥ずかしいかも、)

アイラはきっと寒くて抱きついてくるのだろうと思い、またまた魔力操作で体を温めます。

(んーーーーーーーーーーーーーーっ、アタシは人間カイロじゃないぞー!)

朝日は毛布の上からかけてあったコートを頭からかぶり、またまた眠りについたのでした。

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