猫科男子のお願い
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
猫っぽい人を見ると、わしわししたくなります。
あと猫じゃらし振りたくなります。
私と共に住んでいる彼奴との出会いは今でも忘れない。掴み所がなくて、べらぼうに軽口が多い奴だった。出会い頭に口説かれた時には思わず面食らったのを覚えている。
そんな彼は夜行性さながら昼は眠そうに目を擦り、ぐりぐりと私の方に頭をこすり付けていた。
「お腹空いた」
「ハイハイ」
猫かお前は。というツッコミは、もう何度したか分からない。犬か猫で例えるならば、間違いなく猫である。それも飼い猫ではなく、野良猫。
私は纏わり付いて離れない此奴の頭を引き剥がすと、立ち上がる。すると胴回りにへばりついて行動を邪魔しに掛かる。この何とも捻くれたこの性格、面倒臭い。
「どいてくれる?」
「やだ。お話しよーよー。出会った時のベタベタな話しよーよー」
此奴本当に面倒臭いな。猫なら猫じゃらしぶん投げて、そのままお暇すんぞ。
私はぐしゃぐしゃと掻き回しながら、さり気なく引き剥がそうとする。が、流石男の腕、だらんと巻きついて居るように見えて離れねぇ。
「で、何度でも聞くようだけどさ、何処を好きになってくれたの」
「昔実家に居た猫に似ていたから」
昔飼っていた猫は付かず離れず。飼い猫なのに、野良猫の様なところがあった。甘えたい時に甘えて、気が済んだらおさらばさんさん。捕まえたと思ったら、手の内から逃げて行く。
あの子の目は驚いた様な丸目ではなかった。何処か達観した様に切れ長。それを殊更細めてゴロゴロと音を鳴らす。前に居座る此奴の様に。
「偶にお前に向かって猫じゃらし振りたくなる。んでもって適当に放り投げて、気が逸れたうちに逃げたくなる」
「逃げるのは僕の方だよ」
「知ってる」
あの子も私を置いて亡くなったしね。お前も何時かは私を置いて去るんだろう。その時、私は泣けるだろうか。
此奴は神妙な顔をして腰から手を離す。そのままずるんとソファに寝そべって、『ねぇ』と鳴く。まるで『にゃぁ』と言うように。
「でも……君には逃げる側でいて欲しいな」
オマケ
「え〜、僕というものがありながら、漫画読んでる〜」
「猫好きが四六時中猫を構わないのと同じなんなけど」
「どのこが好み?」
「この子。目が良い。ちょっとからかった様な半眼。お前に似てる。あと笑い方。笑うとギザ歯になる。お前になる」
「君、本当に僕のこと好きだよねー」
大事にされてる猫って、目が真ん丸なんですよね。
野良の子って、目付きが鋭い子が多い気がします。
勿論、個性によりけりですが。当社の傾向として。
一般的な真ん丸お目目ではなくアーモンド型。
猫が泣く時の様にニヤッと笑った口。
そしてじゃらすだけじゃらした後に、遠くへぶん投げて飼い主が逃げる遊び。
昔飼っていた猫を連想していると思います。
そしてこの言葉。
『お前も置いていくんだろ』
飼い猫は虹の橋を渡ってます。
亡くなる事はなくても、恋愛なので心変わりで離れることもあるでしょう。
それは当の本人、彼もお分かり。
でもあえて。です。
貴方が寂しくないように、『逃げる側でいて欲しい』です。