88話 ロボ10号
「さて。それでは次だ」
「次……でござるか?」
「さっきも言っただろう。新たな野球ロボの導入だよ。実はもう届いていて、起動中だったんだ。……ほら、来たぞ」
理事長が指差す方向を見ると、1体のロボが現れた。
そのロボは、走ってグラウンドまでやって来た。
『ピピッ! 当機は『野球ロボ10号』です。ポジションはピッチャー。公式試合では、最速120kmのストレートが投げられます』
「おお……! 悪くないな!!」
ロボ10号が名乗りを上げた瞬間、龍之介が反応する。
120kmのストレート。
プロ野球では問題外だし、甲子園レベルでも物足りない。
地方大会でも、強豪校相手には厳しいだろう。
だが、地方大会中堅までのチームならそこそこ通用しそうだ。
「安心して中継ぎを任せられるほどではないが……。俺が怪我したときとかの保険としては、充分な性能だ」
龍之介が評価を下す。
負けてしまった大火熱血高校戦――。
最終回の龍之介の投球は、熱暑による疲労困憊でズタボロだった。
あれなら、今の野球ロボ10号に代わってもらった方がマシなレベルだっただろう。
逆に言えば、そういった限定的な場面以外は普通に龍之介が投げた方がいい。
野球連合がロボを支給する基準は、それなりにしっかりしているように思えた。
「頑張って3回戦まで勝ち上がった甲斐があった。それじゃ、練習を始める前に、現状を把握しておくか。ロボ1号。恒例のやつを頼む。俺たちの能力はあまり変わっていないと思うが、ロボの性能が上がったからな。チームの総合力も向上したはずだ」
『ピピッ。承知しました。スキャンを始めます……』
龍之介から指示を受けたロボ1号が、データを整理していく。
彼らは、その結果を静かに待つのだった。