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76話 勝者は……

 桃色青春高校vs大火熱血高校の試合に決着が着くまで、あと少しの場面だ。


「ランナー満塁……か」


 9回裏。

 ツーアウト・ランナー満塁という状況で、大火熱血高校は4番の熱海が打席に入る。


(……絶対に抑える!)


 龍之介は、ボールを握りしめて気合いを入れた。

 ここまでのイニングで、彼は強力打線を相手に3失点に留めている。

 このピンチも切り抜ければ、桃色青春高校が勝利を収めることになる。


(四球だけはダメだな。ここは何とかストライクを入れていかないと……)


 9回裏の守備が始まった時点で、龍之介にはスタミナ切れが顕著に表れていた。

 いや、スタミナだけではない。

 右手のマメが潰れ、爪が割れたことにより出血している。

 だが、彼はそれを押して投球を続けた。


『ストライクッ!』


 まずは1球。

 ストレートがストライクゾーンに入った。

 球速は120km/hを少しだけ超えた程度である。

 龍之介のスタミナ切れは明白だった。


『ボール!!』


 次の球は外れた。

 これでワンボール・ワンストライク。


(そろそろ打ちに来るのか? それとも、待球策に出るのか?)


 龍之介は相手打者を見る。

 強豪校の4番バッターだけあって、貫禄のある構えだ。

 しかし同時に、その目の奥には闘志の炎が燃えている。

 待球策には出ない。

 そんな気迫が伝わってくる。


(ならば……)


 龍之介は心の中で頷き、セットポジションに入る。

 彼は足に力を込めると――投球した!


「ぐっ!! くそっ!!!」


 打った熱海がバットにボールを引っかける。

 打球は力なく前に転がった。


『ボテボテのピッチャーゴロ! 龍之介投手、慎重にゴロの捕球体勢に入り――ボールをグラブに収めました!!』


 実況ロボがアナウンスする。

 熱海の打球は、完全に打ち損じだった。


「龍さん!」


「龍之介!!」


 ユイとアイリが叫ぶ。

 長かった試合もようやく終わりが訪れようとしている。

 龍之介の熱投が、報われる時が来たのだ。

 だが――


「っ!!!」


 龍之介の顔が歪む。

 肉体が限界に達したのだ。

 足の筋肉、肩の筋肉……。

 あるいは、手のマメや爪の影響かもしれない。


「えっ!? あっ……」


 ミオは悲鳴にも近い声をあげた。

 龍之介の手から放たれたボールが、大きく上に逸れたからだ。

 ミオはジャンプするが、届かない。


『こ、これは痛恨のエラーです! ボールはライト方向のファウルゾーンに! その間に3塁ランナーホームイン! そして――2塁ランナーもホームイン!! 大火熱血高校、サヨナラ勝利ーー!!」


 実況ロボが叫ぶ。

 ――その瞬間、龍之介は膝から崩れ落ちた。


「龍先輩!」


「龍殿!!」


 ノゾミとセツナが駆け寄る。

 しかし、返事はない。

 全てが限界を超えており、もう意識を保つことすら難しかったのだ。


「た、大変です! 龍様が! 龍様がぁ!!」


「龍之介、しっかりして!!」


「担架を持ってきてくださいまし! 早く!!」


 ミオ、アイリ、ユイが叫ぶ。

 試合は終わったが、まだ龍之介は倒れたまま起き上がらない。

 こうして、桃色青春高校の秋大会が終わったのだった。



     123456789 計

――――――――――――――――――

桃色青春|300001000 |4|

大火熱血|010010012*|5|

――――――――――――――――――

試合終了

大火熱血高校の勝利




【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ32【ダークホース桃色青春高校】


976:代走名無し@野球大好きオジサン

……終わったか


977:代走名無し@野球大好きオジサン

くっそ……

惜しい試合だったわ……


978:代走名無し@野球大好きオジサン

いい熱投だったが……

やはり投手1人では強豪校に勝つのは厳しいのか……


979:代走名無し@野球大好きオジサン

次の大会に期待だな……

それまでにどれほど成長するか、楽しみではある

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