表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/171

73話 2回の裏 ゲッツー崩れ

『7番・セカンド・赤月君』


「しゃあぁああ!! 打ってやるぜぇええっ!!」


 赤月が気合を入れる。

 彼女は堂々とした雰囲気でバットを構えた。


(さて、どう攻略するか……)


 龍之介は考えを巡らす。

 現状は、ワンアウト・ランナー1塁3塁だ。

 最高の結果はゲッツーだろう。

 得点を許さないまま、即座に攻守交代となる。


(だが、今の二遊間ではゲッツーは厳しい。三振か内野フライを理想としつつも、1失点覚悟で守るところだな)


 龍之介はそう判断する。

 1点を奪われないように焦った結果、フィルダースチョイスやエラーなどでピンチを広げては元も子もない。

 3点差あるのだから、ここは大量得点だけを警戒すればいい局面だ。


「はぁっ!!」


「いい球だっ! だが、打つっ!!!」


 赤月がストレートを打ち返す。

 打球はショート真正面に転がったが、やや勢いはない。


「アイリ! セカンドに送球してフォースアウトだ!!」


「分かってるよっ!」


 龍之介が指示を出す。

 ボールは遊撃手アイリの守備範囲内だ。


 3塁ランナーである灯谷は既にスタートしている。

 ホームに送球すれば、クロスプレイになっただろう。

 上手くタッチできればアウトになり、失点を防ぐことができる。

 しかしギリギリのタイミングであり、セーフになる可能性も高い。

 そうなれば、アウトを取れないまま失点する上、なおもピンチが続くことになる。

 ここは、確実にアウトにしておく場面だ。


「きぃええええええっ!!」


『アウトッ!』


 1塁ランナーの不知火が2塁にスライディングする。

 しかし、これはアウトになった。

 クロスプレイにならないフォースアウトなので、守備側にミスがない限りはほぼ確実にアウトが取れる。

 続いて、アイリの送球を2塁上で受け取った野球ロボが1塁に送球した。

 いわゆる、6-4-3のゲッツーコースである。


「どらあああああぁあああっ」


『セーフ!』


 赤月が雄叫びを上げながら1塁にヘッドスライディングをする。

 その気迫が実ったのか、1塁の判定はセーフとなった。


(理想的なゲッツーコースだったが……。やはり、野球ロボの性能ではゲッツーは難しいな)


 龍之介は冷静に判断する。

 野球ロボの性能は低めに抑えられている。

 エラーはあまりしないが、守備範囲が狭く、捕球後の送球動作への移行が遅く、単純に送球速度も遅い。

 これでは、ショートのアイリが的確に捌いたところでゲッツーは取れない。


(もう少し2塁寄りに打球が転がっていればな……。アイリが捕球した後、そのまま自分で2塁を踏んで1塁に送球……なんてパターンもあったのだが)


 龍之介は心の中で愚痴をこぼす。

 それならば野球ロボを介さないので、ゲッツーを取れる可能性は十分にあった。


「よっしゃあああぁっ! まずは1点を返したぜぇええっ!!!」


「「「うおおおおぉっ!!!」」」


 大火熱血高校が盛り上がる。

 3点差から2点差に縮まっただけなのに、大盛りあがりである。

 龍之介は、まるで絶体絶命に追い詰められたかのような錯覚を覚える。


「龍さん! 1点を取られましたが、まだ2点リードです! 気を引き締めていきましょう!!」


「ああ、そうだな。とにかく全力で投げ込んでいくぜ」


 ユイが鼓舞してくれる。

 龍之介は彼女のおかげで、冷静さを取り戻すことができた。

 無理にホームへ送球せずに2塁でフォースアウトを取ったため、現状は2アウト・ランナー1塁である。

 油断はできないものの、さほどピンチという局面でもない。


「うらあああぁっ!!」


『ストライクっ! バッターアウトっ!!』


 龍之介が8番バッターを三振に切って取る。

 これで2回裏の大火熱血高校の攻撃は終了した。

 桃色青春高校は1点を失ったものの、まだ2点のリードがある。

 こうして、試合は進んでいくのだった。



     123456789 計

―――――――――――――――――

桃色青春|30       |3|

大火熱血|01       |1|

―――――――――――――――――

2回裏、大火熱血高校の攻撃終了




【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ31【ダークホース桃色青春高校】


715:代走名無し@野球大好きオジサン

大火熱血高校、1点を返したか……


716:代走名無し@野球大好きオジサン

1点だけを返したところで、まだ2点差あるからなぁ

好投手である龍之介選手から、あと2点も取るのは簡単じゃないだろう


717:代走名無し@野球大好きオジサン

桃色青春高校が追加点を入れる可能性もあるしな

3番の龍之介選手、4番のミオ選手あたりはかなりの強打者だぞ

新加入のセツナ選手の選球眼もなかなか悪くなさそうだし


718:代走名無し@野球大好きオジサン

逆に、もし2点差を守り切るような展開になったら……


719:代走名無し@野球大好きオジサン

それはそれで見応えがありそうだが

その場合はどっちが有利なんだろうな?


720:代走名無し@野球大好きオジサン

どちらかと言えば大火熱血高校じゃないか?

強豪だし、ヒリヒリする展開には慣れているだろう

あの熱気で押せ押せムードにすれば、相手のミスにも期待できる


721:代走名無し@野球大好きオジサン

熱気と言えば、今日の気温は高いみたいだな

両投手の体力がもつかどうか……


722:代走名無し@野球大好きオジサン

>>721

控え層が厚い大火熱血高校は大丈夫だろう

ただ、桃色青春高校は怪しい


723:代走名無し@野球大好きオジサン

>>722

龍之介選手は2試合連続で完投してるぜ?

スタミナは十分にある


724:代走名無し@野球大好きオジサン

>>723

1回戦や2回戦の相手とは打線のレベルが違うからなぁ……

1球1球に手を抜けないし、体力の消耗スピードも全然違うだろう

特に今日は、今までの試合日よりも断然に暑いから


725:代走名無し@野球大好きオジサン

とにもかくにも、両投手の頑張り次第といったところだな

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ