表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/171

55話 9回の裏 4番の重圧

 9回の裏。

 ワンアウト・ランナー1塁2塁。

 打球次第では逆転サヨナラの可能性すらある。

 バッターは、4番のミオ。

 龍之介は彼女に激励の言葉をかけると、ネクストバッターズサークルにいるユイに視線を向けた。


(改めて、ユイの存在が大きいと感じるな……)


 ユイは野球の素人だ。

 しかしバレーボール選手としては既に一流であり、身体能力や運動センスは超高校級と言っていいだろう。

 その強肩を活かして相手チームの盗塁を許さないという守備面での貢献はとても大きい。

 そればかりか、打撃面でも犠牲フライを打ち、相手エースから貴重な1点を奪った。

 彼女が5番にいるからこそ、この局面で相手バッテリーは4番のミオと勝負せざるを得ない。


(もちろん、ノゾミやアイリにも助けられている。9回を守って2失点で済んでいるのは、彼女たちの存在が大きい)


 2人共、ユイと同じく野球選手としては素人である。

 だが、それぞれが一流の陸上選手や合気道家として、類まれな身体能力と運動センスを持っている。

 その守備力はピカイチだ。

 また、アイリは先制のホームを踏んでいるし、ノゾミは今こうして同点のランナーとして2塁にいる。

 攻撃面での貢献も大きい。


(そして、俺たちが誇る4番打者も忘れてはならない。ミオ、頼むぜ)


 龍之介は心の中で、ミオに声援を送る。

 すると、それを感じ取ったかのように打席に立つミオがニヤリと笑った。


「見ててください。龍様」


 ミオがそう呟いたようにも見えた。

 しかしそれは龍之介の気のせいだったのか、彼女はバットを構え直すと相手ピッチャーを睨む。

 そして、そのままゆっくりとした動作で構えた。


(ホームランが理想ですが……。最優先はアウトにならないことでしょうか……)


 ミオは打席の中で、そんなことを考えていた。

 ここで彼女がアウトになった場合、ツーアウト・ランナー1塁2塁となる。

 普通に考えれば、なおも同点・逆転のチャンスは継続中だ。

 しかし、6番にいるのが野球ロボだと話は変わる。

 5番のユイを敬遠して、ツーアウト・満塁にする可能性があるのだ。


『ファウル!』


 ミオは2球目のカーブをバットに当てた。

 しかし、打球は前に飛ばない。

 これでワンボール・ワンストライクとなった。


(甘めのコースだったのですが……)


 ミオは不満げに奥歯をかみしめた。

 平常時の彼女なら、芯で捉えていたかもしれない。

 だが、自分の打撃次第で勝負が決まってしまう状況では、どうしても力みが出てしまうようだ。


『ファウル!!』


 またしてもファウルボールとなった。

 緊張しているのは相手投手も同じなのか、やや甘めのボールが続いている。

 だが、今のミオでは仕留めきれなかった。


(難しいですね……)


 ミオはそう溜め息をつくと、一度バットを下ろした。

 そして深呼吸をして気持ちを整えていた、その時だった。


「ミオ! 落ち着いていけ! 俺との秘密特訓を思い出すんだ!!」


 1塁ランナーの龍之介が再び声をかけてきた。

 彼は外野まで――いや、球場中に聞こえるような大声で叫んでいる。


「ミオちゃん、リラックスだよっ!」


「後ろにはわたくしが控えています。安心なさって!」


「平常心! 平常心ね!!」


 ノゾミ、ユイ、アイリの3人も続けて声をかけてきた。

 その声援で、ミオの心に落ち着きが戻ってくる。


(そうでしたね……。私には龍様が、仲間たちがいます)


 ミオは微笑みながらチームメイトたちの声援に応える。

 そして、再び打席に入るとバットを構えるのだった。



     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|000000002|2|

桃色青春|00010000 |1|

―――――――――――――――――

9回裏、桃色青春高校の攻撃中

ワンアウト・ランナー1塁2塁

バッター:4番・ファースト・ミオ

ワンボール・ツーストライク




【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ20【ダークホース桃色青春高校】


698:代走名無し@野球大好きオジサン

あっさり追い込まれたな

これは厳しそう


699:代走名無し@野球大好きオジサン

4回には大飛球を打っていたが、所詮はパワーだけなのか?

タイミングが全く合っていない


700:代走名無し@野球大好きオジサン

低めの変化球とかで空振り三振しそうだなぁ……

そうなると、5番のユイ選手と勝負か


701:代走名無し@野球大好きオジサン

>>700

いや……

ミオ選手が凡退なら、5番打者は敬遠するだろう

6番の野球ロボ相手なら、9割方は打ち取れるからな


702:代走名無し@野球大好きオジサン

うーん

桃色青春高校には期待していたんだけどなぁ……

ここで消えるのか


703:代走名無し@野球大好きオジサン

お前ら、気が早すぎるだろwww

少しはミオ選手に期待してやれよwwww

いくら脳筋打者っぽいからってwwwww


704:代走名無し@野球大好きオジサン

>>703

それは言い過ぎだろ……

確かに期待してはいないが、自分なりに頑張ってる高校球児に失礼だ


705:代走名無し@野球大好きオジサン

>>704

はいはい、言い過ぎたよw

だが、期待できないと思っているのはお前も同じじゃねぇかwww


706:代走名無し@野球大好きオジサン

お前ら、少しは落ち着け

どうせすぐに結果は出るんだから

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ