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48/171

48話 2回表~4回裏 先制したのは…

 桃色青春高校vsプリンセスガーディアン・ハイスクール。

 その試合は膠着した展開が予想された。


 桃色青春高校の投手である龍之介は、2回戦レベルの中ではなかなかに優秀な投手である。

 捕手ユイの盗塁阻止能力は抜群。

 遊撃手アイリの反応速度や正確性も素晴らしい。

 中堅手ノゾミの瞬足を活かした守備範囲の広さはずば抜けている。

 一塁手ミオの守備はやや不安定だが、足を引っ張るというほどではない。

 相手のプリンセス打線がやや貧弱ということもあり、容易に失点することはないだろう。


 一方のプリンセスガーディアン・ハイスクールはどうか?

 投手リンディルのレベルは、龍之介に比べてやや劣る。

 だが、遊撃手ソフィを始めとして全体的に守備が固い。

 総合的な守備能力としては、桃色青春高校よりも上だろう。

 相手の桃色青春高校の打線は侮れないものの、1番・2番の瞬足を自慢の守備で封じ、クリーンアップ相手にはギアを上げて慎重に投げていけば、無失点に抑え続けることも不可能ではない。


 両者、攻撃の決め手に欠けるチームバランスとなっている。

 そして実際、試合はそのように進行していった。





     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|00       |0|

桃色青春|0        |0|

―――――――――――――――――






     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|00       |0|

桃色青春|00       |0|

―――――――――――――――――






     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|000      |0|

桃色青春|00       |0|

―――――――――――――――――

ツーアウト・ランナー1塁2塁とするも

2番二・ガレティアはピッチャーゴロに倒れ無得点





     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|000      |0|

桃色青春|000      |0|

―――――――――――――――――






     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|0000     |0|

桃色青春|000      |0|

―――――――――――――――――





『4回の裏、桃色青春高校の攻撃は、2番・ショート・アイリ君』


 この回の先頭打者であるアイリが打席に入る。

 桃色青春高校はここまで、1安打に抑えられていた。

 そろそろ先制点を取っておきたいところである。


(1回戦のような内野安打は難しい。とにかく、芯でボールを捉えるんだ)


 龍之介がアイリにサインを送る。

 彼女は小さく頷いて、その指示を了承した。

 そして――


「てやーっ!!」


 アイリは初球から積極的にバットを振る。

 やや振り遅れたものの、その打球はサード後方のライン際にフラフラと上がった。


「頼む! 落ちてくれ!!」


 龍之介が祈るように叫ぶ。

 その打球はサードのグラブの少し上を通過し、ライン際ギリギリにバウンドした。


『フェア!』


 審判のコールが響く。

 龍之介が拳を握りしめる。

 ノーアウト・ランナー1塁。

 先制のチャンスがやってきた。

 そして、その勢いに龍之介が乗る。


「おらぁっ!!」


 彼の打球がセンター前に抜けていく。

 これでノーアウト・ランナー1塁2塁にチャンスが拡大した。


「どりゃーっ!!!」


 続くミオはライトへの大きなフライを放つ。

 フェンス手前で捕球されてしまったものの、2塁ランナーのアイリがタッチアップ。

 ワンアウト・ランナー1塁3塁の形になった。


『5番・キャッチャー・ユイ君』


「ユイ! 期待しているぞ!!」


「ふふっ……任せてください!!」


 そう言って、彼女はバットを構えた。

 彼女のバッティングはまだまだ荒削りだ。

 しかし、その長打力には侮れないものがある。

 プリンセスガーディアン・ハイスクールとしては、敬遠する選択肢もあった。

 5番のユイとの勝負を避け、6番以降の野球ロボと勝負していくという選択肢だ。


 だが、プリンセスガーディアン・ハイスクールはそうしなかった。

 いくら野球ロボとはいえ、たまには打つこともある。

 ワンアウト満塁としてまでユイとの勝負を避けるメリットはない。

 そう判断したのだ。

 ユイの打席が始まる。


「いただきでしてよ!!」


 彼女のバットが3球目を捉えた。

 打球はレフト方向へ高く上がる。

 残念ながら失速して、スタンドインとはいかなかった。

 しかし、今はこれで十分である。


『ホームイン! 桃色青春高校、5番・キャッチャー・ユイ選手の犠牲フライで1点先制です!!』


 実況ロボの言葉と共に、ユイが嬉しそうにガッツポーズをした。

 後続の野球ロボが倒れて1点止まりとなったものの、これで均衡が崩れたことになる。


「ユイ! よくやった!!」


「ユイさん、さすがだね!」


「いい感じですっ!」


 龍之介、アイリ、ノゾミから声をかけられる。

 ユイは、ますます嬉しそうな笑みを浮かべたのだった。



     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|0000     |0|

桃色青春|0001     |1|

―――――――――――――――――

4回裏、桃色青春高校の攻撃終了




【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ19【ダークホース桃色青春高校】


534:代走名無し@野球大好きオジサン

ユイ選手、ナイス犠牲フライ!


535:代走名無し@野球大好きオジサン

これで試合は決まったな

ロースコア戦でこの1点は大きすぎる

プリンセスガーディアン・ハイスクールの打線は弱いみたいだし


536:代走名無し@野球大好きオジサン

まだ分からんぜ

1回戦でも、プリンセス打線は終盤で得点を重ねていた


537:代走名無し@野球大好きオジサン

終盤に強いジンクスでもあるのか?

ま、お手並み拝見ってところだな

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