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46話 1回の裏攻撃前 最高の女房役

 1回の表を無失点で切り抜けた桃色青春高校。

 ベンチに引き上げてきた龍之介に、キャッチャーのユイが声をかける。


「龍さん、どういうおつもりですの?」


「ん? なにがだ?」


「どうして、3番打者にストレートのフォアボールを与えましたの? 龍さんのコントロールなら、ストライク自体は簡単に取れるはずでしょうに」


 ユイが不服そうな表情を浮かべて尋ねる。

 龍之介のコントロール評価はDだ。

 極端に良いわけではないが、極端に悪いわけでもない。

 彼ならば、スリーボール・ノーストライクからとりあえず甘めでもストライクを1球入れるということが十分に可能だ。


 一発長打のある打者が相手ならば、そういう不用意な一球が命取りになるリスクもあるが……。

 プリンセスガーディアン・ハイスクールの3番打者であるセリナのパワー評価はFだ。

 それなら、やはり四球を出すよりも真ん中気味にストライクを入れていった方がいい。


 ユイの指摘はもっともである。

 龍之介はバツの悪そうな顔をすると、頭をポリポリと搔いた。


「気づいていたのか……。いや、それはだな……」


「ああ、言い訳は結構でしてよ。キャッチャーであるわたくしのリードがご不満だったのでしょう? 龍さんの方が経験豊富ですし、責める気は毛頭ございませんもの。理由だけを率直に教えていただきたいのですわ」


 ユイが真剣な眼差しで尋ねる。

 彼女は龍之介を心から信頼している。

 だからこそ、今回の彼のピッチングを理解したかったのだ。

 そんなユイの表情を見て、龍之介は観念したかのような表情を見せた。


「まあ、そうだな……。お前に不満があったわけじゃないんだが……。むしろ不満なのは相手打線の方だ」


「相手打線?」


 ユイが首を傾げる。

 彼女の問いに対し、龍之介はその理由を説明し始めた。


「ああ、そうだ。あのチームは俺たちを舐めている。特に、こちらのキャッチャーの盗塁阻止能力についてな」


「それは……仕方のないことでしょう? わたくしが未加入だった1回戦では、相手の大草原高校からたくさん盗塁をされてしまったと聞いていますわ。なら、2回戦でも塁を盗み放題だと考えられてしまうのは当然……」


「まあ、それはな。だが……正直、気に食わない」


「え? どういうことですの?」


 ユイがさらに首を傾げる。

 龍之介は、そんな彼女の胸を揉み始めた。


「ちょっ……! りゅっ、龍さん! 攻守交代の隙間時間とはいえ……試合中にそんなことしないでくださいまし!!」


 ユイが顔を真っ赤にして、龍之介の手を振り払う。

 だが、龍之介は真剣そうな表情を浮かべていた。


「ユイ……。お前は最高の女房役さ。おっぱいが大きく、強肩の美少女キャッチャー。こんな人材、他を探してもそうそう見つからないだろう。だからな……」


「にょ、女房? それは嬉し……あっ! そっ、そこはダメですわっ! ああっ……!!」


 龍之介がユイの胸を揉む。

 おっぱいマイスターの彼からすれば、やはり最高の揉み心地だ。

 ユイは顔を真っ赤にしながら、必死に耐えている。


「俺は自慢したかったのさ。俺の女房は最高だってな。そのために、あえてフォアボールを出して、盗塁阻止で3アウト目を取ってもらったんだ。これでもう、奴らは盗塁攻勢に出る気持ちが失せてしまっただろう」


 龍之介はそう言って微笑むと、ユイを抱き寄せた。

 そして、その柔らかな唇を貪るようにキスをする。


「んむっ……! ふぁっ……んっ」


 ユイは抵抗することなく、龍之介のキスを受け入れた。

 試合前だというのに、完全に二人の世界に入ってしまっている。

 その様子を見かねたアイリとミオが、龍之介をユイから無理やり引き剥がした。


「はいはい、お熱いのはほどほどにしてね」


「龍様、もうすぐプレイが始まります。集中していきましょう!」


「もうっ……! せっかくのわたくしと龍さんの愛の時間が台無しではありませんこと?」


 ユイは不服そうな表情を浮かべている。

 そんなユイの頭を、龍之介が優しく撫でてやった。


「悪いな。でも、俺は他のみんなも大好きなんだ。ユイも、チームメイトとしてみんなを応援してくれないか?」


「……ふふっ。そういうことでしたら仕方ありませんわね。試合が終わった後の楽しみに取っておきますわ」


 ユイは優しい笑顔を向けると、声援を送る態勢に入った。

 そして、龍之介が仲間に向かって声をかける。


「みんな! この試合では、前ほどの失点はしないはずだ! こっちが1~2点取れば、十分に勝機がある! まずは、初回にさくっと先制するぞ!!」


「「「「おー!!!」」」」


 全員が元気よく返事をする。

 こうして、1回裏の桃色青春高校の攻撃が始まろうとしていたのだった。



     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|0        |0|

桃色青春|         |0|

―――――――――――――――――

1回裏、桃色青春高校の攻撃開始前




【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ19【ダークホース桃色青春高校】


302:代走名無し@野球大好きオジサン

なんだこのバッテリーwww

イチャつきすぎだろwwww


303:代走名無し@野球大好きオジサン

地方大会の2回戦とはいえ、今の時代はネット配信されているのにな

その事実を忘れているのか?


304:代走名無し@野球大好きオジサン

中学大会の優勝投手が、高校野球で女子部員にセクハラか……

炎上必至だな!


305:代走名無し@野球大好きオジサン

>>304 いや、セクハラではないだろ

ユイ選手もメチャクチャ嬉しそうだったし……

どちらかと言えば、バカップルがラブラブっぷりを見せつけてきただけだな

今どき、これぐらいじゃ炎上しないぜ


306:代走名無し@野球大好きオジサン

確かに、チーム内の恋愛なんて別に珍しくもないけどね

こんなに可愛くて巨乳な彼女がいたら、高校生活も楽しいんだろうなー


307:代走名無し@野球大好きオジサン

うらやまけしからん!!


308:代走名無し@野球大好きオジサン

ま、チームの恋愛事情は置いておこうぜ

桃色青春高校の攻撃を見せてもらおうじゃないか

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