表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/172

45話 1回の表 3者連続の盗塁阻止

 龍之介は、先頭打者のソフィからいきなりヒットを打たれてしまった。

 だが、大きく動揺はしていない。

 彼の見立てによれば、プリンセスガーディアン・ハイスクールの中で最も優れた打者が1番のソフィだ。

 彼女に打たれる可能性はもちろん考慮済みである。

 後続を打ち取れば問題ない。


(さて……。どんな攻め方をしてくるのかな?)


 龍之介はチラリと打席の方へ視線を向けた。

 その視線の先にいたのは、2番バッターのガレティアである。


(この人も左打ちか……。走塁がそこそこ早くて、ミートバッティングも悪くない)


 龍之介は今一度、相手チームの打線を確認した。

 これから迎え撃っていく2番打者以降は、以下のようになっている。


2番二・ガレティア・EFDDC

3番中・セリナ・EFDDC

4番一・ユーリ・EEFDC


(長打はほぼない。ノーアウトとはいえ、まだ一塁にランナーが出ただけだ。ここからワンヒットで点数を入れられるリスクは低いな……)


 龍之介はそう判断する。

 キャッチャーのユイも、龍之介と同じようなことを考えていた。

 彼女のリードと龍之介の判断が一致し、彼が初球を投じる。

 それはストライクゾーンから外に外れるボール球だった。

 ガレティアがそれを見逃す。


『ボール!』


(へぇ……。際どいコースだったが、振らなかったか)


 龍之介が感心する。

 4人もの女子選手をスカウトできた今、彼の野球能力はそこそこの水準に達している。

 2回戦レベルの中では平均と同程度か、あるいは少し上回っていると言っていいだろう。

 百発百中でコースギリギリを狙うようなコントロールはない。

 だが、ある程度はコースを投げ分けることができるようになっていた。


(ボール先行は避けたい……。次は無難に外角低め寄りのストレートだ)


 龍之介が投球モーションに入る。

 その瞬間、ガレティアがバットを寝かせた。


(バント!? いや、これは――)


「ふふっ! 二塁はいただきですよ!!」


 一塁ランナーのソフィが二塁ベースへ向かって加速する。

 彼女は盗塁を仕掛けてきたのだ。

 考えてみれば、当然の戦略であろう。

 1回戦の桃色青春高校は、大草原高校からの盗塁攻めで苦しんでいたのだから。

 明確な弱点を突かない手はない。


「くっ……! ユイ!!」


「お任せくださいまし!」


 ユイが素早く捕球し、送球体勢に入る。

 そして――


「【キャノン】ですわ!!」


 彼女が二塁へ強烈な送球を放った。

 それは寸分の狂いもなく、遊撃手アイリのグラブに目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。

 彼女は捕球すると同時に、走者ソフィにタッチを行う。


『アウトッ!』


 審判ロボが手を上げる。

 間一髪のタイミングではあったが、ソフィの盗塁を阻止することができた。


「くっ……。これ程までにいい送球をされるとは……。でも、おそらくはまぐれでしょう。こちらの攻撃はまだまだこれからですよ」


 ソフィは悔しさを滲ませつつも、すぐに次の攻撃に気持ちを切り替えた。

 彼女の考え通り、2番打者のガレティアがセカンドへの内野安打で出塁する。

 そして――


『アウッ!』


 ソフィに続いてガレティアも盗塁を仕掛けたが、ユイの送球に阻まれてアウトとなった。

 龍之介は2者連続でヒットを打たれたにも関わらず、これでツーアウト・ランナー無しの状態となった。


『フォアボール!!』


 続く3番打者のセリナが、ストレートの四球を選ぶ。

 龍之介にしては珍しいフォアボールだ。

 塁に出たセリナは、三度目の正直とばかりに盗塁を試みる。


『アウトォッ!』


 キャッチャーのユイが機敏な動きを見せて、またもや盗塁を阻止した。

 これで3連続の盗塁阻止である。

 その光景を見て、プリンセスガーディアン・ハイスクールの面々は驚きの表情を浮かべていた。


「ば、バカな……。1回戦からキャッチャーが変わっていることは理解していましたが……。それにしてもレベルが違いすぎる……」


 ソフィが絶句する。

 マウンド上では、龍之介がドヤ顔していた。


「俺に盗塁を仕掛けるのは、なかなかいい手だったよ。1回戦を見ていれば当然の判断だな。でも、ユイのキャッチャー能力は君が思っている以上に高いんだ」


 龍之介が得意げに言う。

 それに対してユイは笑顔で頷いた。


「その通りですわ! あなたたちがわたくしから塁を盗むのは不可能でしてよ!!」


「くっ……」


 ソフィが悔しそうに唇を嚙む。

 こうして、桃色青春高校の初回の守備は無失点に終わらせることができたのだった。



     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|0        |0|

桃色青春|         |0|

―――――――――――――――――

1回表、プリンセスガーディアン・ハイスクールの攻撃終了




【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ19【ダークホース桃色青春高校】


240:代走名無し@野球大好きオジサン

新キャッチャーのユイ選手、肩強いなwww

まさか3者連続で盗塁を阻止するとはwwww


241:代走名無し@野球大好きオジサン

すげー……


242:代走名無し@野球大好きオジサン

これで桃色青春高校の最大の弱点がなくなったことになるな

もう勝ち確だろ


243:代走名無し@野球大好きオジサン

>>242 いやいや……

投球内容だけを見れば、3者連続で出塁を許しているわけじゃん?

プリンセスガーディアンもこれで学習しただろうし、次の攻撃からは無理に盗塁せずにランナーをためてくるはず……

まだ全く分からんぞ


244:代走名無し@野球大好きオジサン

レフト前ヒット、セカンド内野安打、フォアボールだもんな。

龍之介投手が大炎上する可能性は相当高い

今後どう戦っていくか、見ものだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ