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44話 1回の表 初球打ち

『1回の表、プリンセスガーディアン・ハイスクールの攻撃は、1番・ショート・ソフィ君』


 いよいよ試合が始まる。

 先頭バッターはソフィだ。


「へへっ。お手柔らかに頼むぜ」


 マウンド上から、龍之介が挨拶する。

 それを受けた後、ソフィはヘルメットを深く被り直しながら、左打席へと足を踏み入れた。


「よろしくお願いします。龍之介さん」


 ソフィが微笑みながら挨拶を返す。

 そんな彼女の態度に、龍之介は少し驚いたような表情を浮かべた。


(なんだか……よく見れば可愛らしい子だな。パッと見、凛々しくてクールな印象を受けたけど……)


 龍之介がそんなことを考える。

 すると、ソフィがニッと笑いながら口を開いた。


「あなたは、これからコテンパンに打たれまくることになります。挨拶ぐらい、丁寧にした方が良いと思いまして」


「!? それは……」


 ソフィの挑発に、龍之介がたじろぐ。

 そんな彼の様子を見て、彼女はクスリと笑った。


「ふふっ……。では、お手並み拝見と行きましょうか」


 ソフィはバットを構えると、龍之介をジッと見つめる。

 その視線の鋭さに、龍之介は身震いした。


(なんてプレッシャーだ……! 明らかに他の選手とは違うな……)


 龍之介がゴクリと唾を飲み込む。

 彼が特別感を覚えたのも無理はない。

 ソフィはプリンセスガーディアン・ハイスクールのキャプテンなのだから。


(投球の前に、相手打線の確認をしておくか。ええっと……)


 龍之介が脳内にスコアブックを表示させる。


1番遊・ソフィ・DFCCB

2番二・ガレティア・EFDDC

3番中・セリナ・EFDDC

4番一・ユーリ・EEFDC


(ソフィさんはミートバッティングが上手くて、足も速いな……。2番打者と3番打者はそこまで怖くないが、ソフィさんと同じくミートバッティングと走塁力がそこそこある。4番打者は足が遅い代わりに、多少は長打もある。そんな打線か……)


 龍之介が頭の中で分析する。

 相手打線の弱点を挙げるとすれば、全体的に長打力がないことだろう。

 4番打者でさえ、長打力は桃色青春高校の2番打者アイリと同程度である。

 連打さえ食らわなければ、さほど心配はいらない。

 龍之介はそう考えた。


「さて……行くか」


 龍之介が振りかぶって投球する。

 コースはアウトコース低め。

 彼の得意とする無難なコースだ。

 キャッチャーのユイもそれは把握している。

 だが――


「ふっ……。甘いです!!」


「なっ!?」


 ソフィは、そのボールを綺麗に流し打った。

 打球はレフト前に鋭く落ちる。


「ちっ……。まぁいい。シングルヒットに収まったのは、不幸中の幸いだぜ」


 龍之介が舌打ちしながら呟く。

 その言葉通り、ヒットになったとはいえ、まだ一塁にランナーが出ただけである。


 桃色青春高校のレフトを守っているのは、ロボ0号だ。

 ロボの中で最も打力に優れる。

 しかしその反面、元より守備に難のあるロボの中でも最も守備力が低いのがロボ0号なのである。

 レフト前正面の打球だったのでシングルヒットとなったが、もう少し左か右に逸れていたら長打コースになっていただろう。

 ある意味ではラッキーだった。


「へへっ。まだ大丈夫だぜ。運は俺たちにある」


「随分とのんきなことを言いますね。あなたたちのデータは、こちらも集めているのですよ?」


「データ……?」


 ソフィの言葉に、龍之介が首を傾げる。

 そんな龍之介に対し、彼女は不敵に笑った。


「これからあなたは、惨めに炎上していきます。この試合は大量失点でコールド。そう決まっているのです」


「ほう……。面白いことを言ってくれるじゃないか」


 龍之介がニヤリと笑みを浮かべる。

 ソフィもまた、そんな龍之介の姿を見て笑みを浮かべた。

 次は2番打者が打席に入る。

 果たして、勝負の行方はどうなるのか――。



     123456789 計

―――――――――――――――――

プリンセスガ|         |0|

桃色青春|         |0|

―――――――――――――――――

1回表、プリンセスガーディアン・ハイスクールの攻撃中

ノーアウト・ランナー1塁

バッター:2番二・ガレティア




【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ19【ダークホース桃色青春高校】


128:代走名無し@野球大好きオジサン

さて、初回の攻防はどうなるかな?


129:代走名無し@野球大好きオジサン

とか言ってる間に、初球打ちであっさりヒットかよ


130:代走名無し@野球大好きオジサン

見事な流し打ちだったな

打球速度はそれほどでもないが、打球の方向と角度がいい


131:代走名無し@野球大好きオジサン

桃色青春高校のショートのアイリ選手は守備範囲が広いけど……

さすがにあの打球は取れないよな


132:代走名無し@野球大好きオジサン

2番打者はどう攻める?

手堅くバントか?


133:代走名無し@野球大好きオジサン

バントは悪手だな

セイバーメトリクスの観点から言っても、バントはデメリットの方が大きい

まだ初回だし、連打で複数得点を狙っていこうぜ


134:代走名無し@野球大好きオジサン

>>133 セイバーメトリクス云々はプロレベルの話だろ

高校野球へ簡単に適用できない


135:代走名無し@野球大好きオジサン

>>134 同意

高校野球はトーナメント形式だしな

とりあえず1点を先制することによる精神的優位は大きい


136:代走名無し@野球大好きオジサン

お前ら、重要なことを忘れていないか?

桃色青春高校は、1回戦で相手チームに盗塁されまくっていたんだぜww

バントなんてせず、盗塁すればいいだけの話だろwww


137:代走名無し@野球大好きオジサン

そういやそうだったな

だが、キャッチャーはこの試合からユイっていう人間選手が務めている

そう簡単に盗塁できるかね?


138:代走名無し@野球大好きオジサン

野球ロボのままだと、あまりにも弱点が露骨だからなぁ……

とりあえず人間選手を配置してみましたって感じ?


139:代走名無し@野球大好きオジサン

盗塁阻止には期待できなさそうかも

プリンセスガーディアン・ハイスクールも、弱点があれば容赦なく突いてくるだろうな

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