表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/171

29話 1回の裏 ミオちゃん・バズーカ

「ふぇーん……。私は弱々のバッターですよぅ……。こわいよー……」


 ミオが泣きそうな顔で呟く。

 桃色青春高校の攻撃中で、ノーアウト二塁だ。

 大草原高校は敬遠策を選び、スリーボール・ノーストライクとなっている。


「龍様ぁ……。ごめんなさい。私は打てませぇん……」


 ミオが泣き言を言う。

 どう考えても、敬遠されている最中の4番バッターには見えない。


(ふーむ……。龍之介殿が言っていたことは事実のようでござるなwww確かに、拙者としたことが警戒しすぎだったようでござるwwww)


 草刃エルは、龍之介から言われたことを信じた。

 それほどまでに、打席に立つミオは弱々しかったのだ。


(しかし……カウントは既にスリーボール・ノーストライクでござる。いくら弱そうなバッターでも、ここから勝負するべきでござろうか……?)


 エルが考え込む。

 このボールカウントからだと、1球でも外れたらフォアボールとなる。

 それを避けるためには、はっきりとストライクゾーンに入れていく必要があるだろう。

 今はノーストライクなので、基本的にはそれを3球繰り返すことが前提となる。

 いくら非力なバッターが相手でも、はっきりとしたストライクが3球あれば打ち返されるかもしれない。


「おらー! みっともない敬遠をしてるんじゃねぇぞ!!」


「高校球児らしく、正々堂々と勝負しろ!!」


「弱そうな女の子を敬遠なんて、恥ずかしいと思わないのか!」


 スタンドからそんな声が響く。

 1回戦の弱小高校同士の対戦で、しかも1回裏の攻撃。

 そんな中の敬遠策に、観客の心象もあまり良くないようだ。


「ふひひwww外野がうるさいでござるなwwwwまぁ、お望み通りにしてやるでござるよwwwww」


 エルが笑う。

 彼女の脳内では、ミオを打ち取る方向に戦法が練り直されていた。


(ここまで弱そうなバッターなら、野球ロボよりも下かもしれんでござるwww下手にランナーをためるより、普通に打ち取っていくでござるよwwwww)


 エルがそう考える。

 もしも、龍之介が挑発しなければ……。

 ミオが弱そうな演技をしなければ……。

 観客がヤジを飛ばさなければ……。

 ここで敬遠策を続けていれば、結果は違ったものになっていただろう。


 しかし現実は、そうならなかった。

 エルのリードに従い、原田投手が4球目を投げる。

 それはド真ん中へのストレートだった。


(この打者でアウト1つ追加でござるよwwwww)


 エルはほくそ笑む。

 だが――


「はあああぁっ!! 【ミオちゃん・バズーカ】!!!」


 ミオがバットをフルスイングする。

 エルが聞いたのは、聞いたこともない必殺技の名前だった。

 しかし、その破壊力は絶大。


「なっ……!? ば、バカなでござる!!!」


 ミオのバットが火を噴き、ボールが大空に舞い上がる。

 エルは驚愕した。

 いかにも弱そうなバッターが、大飛球を放ったのだから。

 そしてその行方は――


『ボールはレフトスタンドへ! ホームランです! 桃色青春高校の4番ミオ選手、4球目を見事スタンドに叩き込みました!!』


 レフトスタンド。

 文句なしのホームランであった。


「やったー!! 打ちましたよぉ!!!」


 ホームランを打ったミオは、笑顔でダイヤモンドを一周する。

 そして、ホームベースで龍之介がハイタッチで迎えてくれた。


「ナイスホームラン! 良いスイングだったな!!」


「えへへー」


 褒められて嬉しそうなミオ。

 その近くでは、エルが悔しそうに震えていた。


「ば、バカな……。拙者の判断ミスで……大草原高校が弱小校に負けるでござるか……?」


 呆然とするエルを他所に、龍之介とミオは笑顔でベンチに戻る。

 なおも桃色青春高校の攻撃は続く。

 ……と言いたいところだが、5番打者以降は野球ロボが並んでいる。

 ホームランに動揺した原田投手からポテンヒットとフォアボールを奪ったものの、さらなる得点を奪うには至らない。


 3つのアウトを取られ、桃色青春高校の攻撃が終わる。

 1回の裏が終わって、0対4。

 初陣の滑り出しとしては、この上ないほどの大成功となったのであった。



     123456789 計

―――――――――――――――――

大草原 |0        |0|

桃色青春|4        |4|

―――――――――――――――――

1回裏、桃色青春高校の攻撃終了




【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ7【スターライト学園】


656:代走名無し@野球大好きオジサン

ポカーン……


657:代走名無し@野球大好きオジサン

ポカーン……


658:代走名無し@野球大好きオジサン

これは酷いwww


659:代走名無し@野球大好きオジサン

大草原高校のバッテリーが雑魚すぎるwww

敬遠するのか勝負するのか、はっきりしろwwwwww


660:代走名無し@野球大好きオジサン

スリーボール・ノーストライクから謎に勝負した結果wwwwww

ホームランを打たれたでござるの巻wwwwwww


661:代走名無し@野球大好きオジサン

>>660 草生えるwww

まさか、ここまで弱いとは思わなかったわ……wwww

大草原不可避wwwwwwwwwwww


662:代走名無し@野球大好きオジサン

いや、大草原高校を責めるのは違うだろ

桃色青春高校の4番が凄かっただけ

女子選手であそこまでホームランが打てるなんて、大草原高校も予想外だったんだろう


663:代走名無し@野球大好きオジサン

>>662 まぁ、それは否定できないなwww

スポーツ医学が発展した影響で、外見だけじゃパワーの有無が判断できんとはいえ……

あんな小さな体であそこまで飛ばす奴は、なかなかいないよなwww


664:代走名無し@野球大好きオジサン

序盤だが、4点差のリードを献上した大草原高校

挽回できるのか?www


665:代走名無し@野球大好きオジサン

野球ロボの隙を突いていけばチャンスはある。

攻撃でも守備でも


666:代走名無し@野球大好きオジサン

両チームのお手並み拝見ってところだなww

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ