188話 サユの打撃-2
「じゃあ、実戦形式だ。俺が投げよう」
龍之介がマウンドに立つ。
空気が少しだけ張り詰めた。
最初のボール。
真ん中、ストレート。
「――そこ!」
サユのスイングが鋭く走り、芯をとらえた打球がセンターへまっすぐ飛んでいく。
快音とともに、野球の“気持ちよさ”が、サユの胸を打つ。
「ナイスバッティングですぅ!」
「今のは完璧ですわ」
「やりますね。手を抜かれているとはいえ、龍様の球を打ち返すなんて」
周囲から称賛の声が飛ぶ。
しかし、次はコースが変わった。
外角高め。
「え、ちょっと遠くない?」
サユのバットは届かない。
見事に空を切る。
「はい、空振り一つ」
「うるさい! 今のは風のせい!!」
「無風でござるよ、サユ殿」
すかさずセツナがつっこむ。
続く球は、内角低め。
反射的に身を引きながら、またしても空振り。
「近っ……! 体に当たりそうだったんだけど!!」
「そこもストライクゾーンだ。体から三十センチは離れていたぞ」
「三十センチ……。そんな近くに速いボールが来るのが当たり前なの? 怖すぎるでしょ、野球……」
サユの額に冷や汗がにじんだ。
さらに、球種が変わる。
変化球。
ふわりと手前で落ちる球。
サユが振ったバットは、まるで意図を見透かされたように空を切った。




