187話 サユの打撃-1
「的はセンターね。――そこ!」
振り抜かれたバットが、芯でボールを捉える。
ピッチャー返しの軌道で、センターに抜けていった。
「おお、いい当たりだな。スイング軌道も悪くない。もう十球、真ん中だけ」
「はいはい」
サユはテンポよくスイングを重ねる。
腰の回転が生む力を、バットに乗せて。
感覚が一つずつ、確信へと変わっていく。
「十球中、強い当たりが七本だな」
「おお、七割超えでござるか。さすが弓道部代表」
「止まってりゃね」
息を切らしながら、サユが肩で息をする。
額の汗をぬぐいながらも、口元にはまだ余裕が残っていた。
「次は、トスバッティングだね」
アイリがネットの前にしゃがみ込む。
そして、横からボールを軽く放る構えを見せた。
「ボクが前から投げるから、そのタイミングで振ってみて」
「了解。動く的、ね」
放たれたボールを、サユが素早く捉える。
一球、二球、三球。
芯で捉えた打球は、しっかり前へ飛んだ。
「やっぱり、当て方は分かってるんだよね。スイングも力強いし」
「手だけじゃ駄目で、足と腰も上手く使わないといけない。その感じは、弓と似てるわ」
サユが小さくうなずきながら、フォームを見直すように腕を軽く振った。
身体の芯を利用する感覚。
それは彼女の中では、すでに馴染んだものだった。




