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186話 サユの守備-5
「サユのポジションはライトだ。接触プレイが少ない。何より――」
言葉を切り、サユを見る。
真っすぐに、その目を射抜くように。
「この肩が、チームにとって最大の武器になる。遠投のプロフェッショナルだ」
静かな言葉の中に、明確な評価があった。
それはサユの存在価値を、はっきりと認めるものだった。
「ライトゴロ製造機の誕生ですぅ」
「素晴らしい。格好良いでござるな」
マキとセツナの軽口が飛ぶ。
チーム内が温かい空気で満ちた。
「……端っこから、矢みたいに刺す係ってわけね」
サユが小さく笑った。
言葉の端に照れが混ざる。
だがその笑顔には、確かな誇りが宿っていた。
「そうだ。それだけでも、うちの守備はかなり締まる」
「打つ方は?」
「今から見る」
龍之介は、ためらいもなく言い切る。
そして、自身の手に持っていたバットをサユに手渡した。
「まずはティーだ。止まってる対象を狙う――ある意味で、弓道に一番近い」
「ふふん、止まってるなら任せなさい」
サユがティースタンドの前に立ち、腰の位置に置かれたボールをじっと見下ろす。
風の音も、周囲の声も、今はもう聞こえていない。
聞こえるのは、自分の呼吸音だけ。




