185/197
185話 サユの守備-4
「へぇ……普通に入ってますよね? ピッチャーの才能まであるなんて、同じ一年生ながら尊敬しちゃいます」
ノゾミの感心した声が飛ぶ。
他のメンバーからも、小さな歓声が上がる。
そして、三球目。
ミオが無言のまま、わずかに重心を落とした。
「そこっ!」
ミオのバットが火を噴いた。
ライナー性の打球が、マウンドに一直線。
「――ひぃっ!?」
サユが悲鳴を上げ、反射的に身をひねって避ける。
ボールは彼女の脇をかすめ、センターへ抜けていった。
「な、なによ今の! 殺意こもってない!?」
「こもってませんよ。いつも通り、全力でスイングしただけです」
ミオは首をかしげるようにして答えた。
その表情には一切の悪意がなく、ただの事実を述べたにすぎないといった風情。
きょとん、とした顔が逆に怖い。
「ピッチャーはこれがあるんだよな。ライナー性の打球が正面に飛んでくる。心臓に悪いだろ」
「悪いどころじゃないわよ……。死ぬかと思ったわ……」
膝に手をつきながら、サユがぐったり呟く。
かろうじて命拾いしたとでも言いたげに。
「決まりだな」
龍之介の低い声が場に響く。
それだけで空気が変わった。
周囲の視線が一斉に彼に向く。




