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184話 サユの守備-3
「……やっぱり怖いんだね」
アイリの言葉は優しく、けれど核心を突いていた。
サユは小さく肩を落とし、観念したようにため息をついた。
「だって真正面から人が飛び込んでくるのよ? 弓の的は突っ込んでこないの!」
「それはそうだな。そこは弓道とは異なる点だ」
龍之介が笑いをこらえながら、バットを下ろした。
勝ち気な性格とは裏腹に、結構なビビりらしい。
そのギャップに、周囲もまた彼女を微笑ましく思っていた。
「サードというポジションにはタッチプレイがある。今のままだとケガのリスクが高いな」
「では、ピッチャーはどうでしょうか?」
ユイが切り出す。
空気を変えるように、わざと弾んだ口調だった。
「ベースカバーはありますけど、接触プレイ自体は少なそうですわ」
「ふむ……。ミオ、一打席頼めるか?」
「承知しました、龍様」
怪力のミオがバットを担いで打席に入る。
サユはマウンドに立ち、プレートを踏んだ。
空を仰ぎ、ほんの少しだけ目を閉じる。
「さっきみたいに、ミットめがけて投げればいいのよね?」
「ああ。お前のコントロールならいけるだろう」
サユが息を整え、一球目を投じる。
ストライク。
二球目も、少し高めだがゾーン付近。




