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163話 日本 vs オーストラリア -6
「……ルビー、ナイスボールだったぜ」
龍之介はベンチ前で立ち止まり、ルビーに声をかけた。
優しい声だった。
戦いを終えた者だけが持つ、穏やかさと尊敬の色が滲んでいる。
ルビーは少しだけ顔を背ける。
頬には赤みがさし、視線は地面をさまよっていた。
だが、唇が震えながらも、はっきりとした言葉が零れ落ちる。
「……悔しいデス。でも……次は負けまセン。いつかきっと、あなたを超えて見せマース……」
悔しさを、情熱に変える強さ。
目の奥には悔しさ以上に、確かな火が灯っていた。
それは、敗北を恐れぬ者の目だった。
試合後、日本チームとオーストラリアチームの選手たちは、食事会でお互いの健闘を称え合った。
ユニフォームを脱ぎ、グラスを交わせば、言葉の壁も消えていく。
笑顔と笑い声が飛び交う中、互いの健闘をたたえる姿があった。
実力が言葉以上に心をつなぐ。
それは、どんな言葉よりも誠実な“交流”だった――