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161話 日本 vs オーストラリア -4
第一球。
ルビーが身体をひねり、思い切り腕を振った。
風を切る鋭い音が一瞬遅れて耳に届き、白球が目にも留まらぬ速さでミットに収まった。
『ストライク!』
主審ロボの声が少し遅れて響く。
「はっや……!」
龍之介の目が見開かれる。
想定より遥かに速い。
二球目。
再び、剛速球。
振り抜いたバットは空を切り、風を切った音だけが虚しく残った。
『ストライク、ツー!』
誰もが息を呑んだ。
中学生――しかも女子が、日本チームの主軸を相手に圧倒しているのだ。
「ホンモノだな……。女子中学生で、これほどの剛速球を投げられる奴がいるとは」
三球目。
今度はわずかに外れた。
しかし、その球速に変わりはない。
『ボール、ワン!』
表情一つ変えず、主審ロボが告げる。
龍之介は口をへの字に曲げた。
(コントロールは甘い……でも、それ以上に“勢い”がある)
四球目もボール。
続く五球目は、内角に大きく外れた。
フルカウント。
マウンド上のルビーは、額に浮かんだ汗を袖で拭い、唇を引き結ぶ。
揺らぐことのない眼差しが、再びキャッチャーミットへと注がれる。