159話 日本 vs オーストラリア -2
試合はさらに熱を帯びる。
日本が2点を追加すれば、オーストラリアも意地を見せて1点を返す。
5対2。
スコアが示すように、両チームが死力を尽くす好勝負だった。
そして、いよいよ試合は最終回へと進む。
九回表、日本の攻撃。
「3番、ピッチャー、龍之介」
場内アナウンスが響く。
龍之介は静かにバットを握り、軽く一回転させながら打席に入る。
その目には焦りも力みもなかった。
むしろ、どこか楽しげですらある。
「日本チームの実力は見せつけられたと思うが……ここで一本、ダメ押しといくか。ハルカに負けてられないしな」
彼の脳裏には、先ほどのハルカの打席が焼きついていた。
二死ランナー 一塁。
そこで彼女は、見事な引っ張りでホームランを放ったのだ。
その一撃は、静かで、そして力強かった。
彼女の野球にかける執念と集中力が、すべて凝縮されていた。
「おっと、相手も投手交代か。マッチョの速球派クローザーみたいな奴でもいるのか? ……え?」
龍之介の口元に浮かんでいた軽口が、途中で止まる。
次の瞬間、目を見開いた。
マウンドへと向かうその人物の姿は、予想していたどんな投手像からもかけ離れていたからだ。