158話 日本 vs オーストラリア -1
龍之介たちがオーストラリアを訪れて三日目。
じりじりと照りつける陽光のなか、日本 vs オーストラリアの試合が行われていた。
5回の表裏が終わり、スコアは3対1。
日本がわずかにリードしている。
ここまで相手打線をきっちり抑え込み、リードを守り抜いているのは、先発のハルカ。
彼女の投球は安定しており、低めへの制球も冴えている。
だが、そのマウンド上の姿に疲労の影が差し始めているのは、誰の目にも明らかだった。
「ふぅ……。今日は暑いわね……」
「ハルカ、無理するな。日本との寒暖差がキツイだろ? あとは俺に任せておけ」
背後からかけられた声は、涼やかで落ち着いていた。
龍之介が彼女の肩に手を置き、安心させるように微笑んだ。
「……頼んだわ」
ハルカは短くそう言い、マウンドを龍之介に託す。
甲子園を制したエースから、中学時代に全国を制したもう一人のエースへ。
なんとも贅沢で豪華な継投であった。
「へへっ! 厄介なピッチャーだったが、スタミナはないみてぇだな。さぁて、二番手ピッチャーをボコボコに――」
「おらぁっ!!」
相手が侮りを見せる中、龍之介が気合のこもった一球を投げ込む。
唸りを上げて伸びるボールが、鋭く外角低めに決まった。
「なにぃっ!? こ、コイツもかなり……!!」
相手打者が驚愕の声を上げた。
秋の激戦、そして冬の合宿。
それらを経て、今の彼はまさに“全盛期”へと近づきつつある。
さすがに甲子園の優勝投手であるハルカにはまだ少し及ばないが、速球、変化球、そして緻密なコントロール。
すべてが一級品と言っていいレベルに達していた。