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151話 ハルカ-6
「――はっ!?」
ハルカは目を覚ました。目の前には、電車内から見える風景と、初詣帰りの人々の姿。頬にはうっすらと涙の跡が残っていた。
「……夢?」
彼女は自問する。だが、胸に残った痛みは本物だ。あの絶望、後悔、喪失感。すべてが脳裏に焼きついて離れない。
自分の手を見下ろしながら、ハルカは息をついた。
「と、とんでもない夢だったわ……。でも、このままじゃ、あれが正夢に……?」
心に残るのは、夢とは思えないほどリアルな痛みと後悔だった。
――やらなきゃ。動かなきゃ。
ハルカは顔を上げた。意を決した表情でスマホを取り出し、以前から誘いを受けていた”とある練習合宿”の予定を確認する。
「夏大会の優勝投手になった私は、自分以外への特別推薦枠をもらっていたわね。……誘おう。私から、ちゃんと」
このまま何もしなければ、夢は現実になる。けれど、今ならまだ間に合うはず。電車の窓に映る自分を見つめ、ハルカは静かに拳を握ったのだった。