150話 ハルカ-5
「じゃあな。もう二度と話しかけるなよ」
言い捨てられた言葉は、凍った風のように耳を裂いた。その場に杭を打ち込まれたように、ハルカの足が動かなくなる。
「ま、待っ――うぐっ!?」
気づいた時には、視界が斜めになっていた。倒れた拍子に手をついたアスファルトの冷たさが、じんと肌に伝わる。膝も擦りむいていた。痛みよりも、その行為に込められた悪意が、心を鋭く抉った。
見ると、少女が彼女に足を引っ掛けていた。龍之介のチームメイトの少女だ。いつの間に近くに来ていたのだろうか? 他にも美少女ばかりが彼に付き従っている。
「あー、クソ女と会って最悪な気分だ。カラオケかボーリングにでも行こうぜ」
彼は、こけたハルカを一瞥もしない。隣にいた女子たちと談笑しながら、そのまま行ってしまった。
「……うそ」
残されたハルカは、寒空の下で動けなかった。胸の奥に、じくじくと痛みが広がっていく。やっと素直になれたのに。もう遅かったの?
足元に落ちた涙の雫が、アスファルトに吸い込まれていく。誰にも気づかれないまま、自分の想いだけがこの冬空に取り残されていく。
「……う、うぅ。うわああああぁん!! 待って! 待ってえぇええ!!」
ハルカは絶叫する。
その瞬間、ふいに景色が揺れた。