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149話 ハルカ-4

「そ、それは……」


 言いかけた言葉は、喉の奥でつかえて出てこない。何をどう説明したらいいのかわからなかった。ただ、彼の顔を見るたび、あの時の自分の判断が間違っていたのではないかという思いが、じわりと滲んでくる。


「それから2年が経ってようやく立ち直り始めたところで、お前のところとの練習試合だ。『あんたの才能はもう終わった』とか『自分のバカな選択を呪え』とか、好き勝手に言ってくれたな。中学で3年間チームメイトだった癖に、言っていいことと悪いこともわからねぇのか。何が『愛の叱咤』だ、何が『信じていた』だ。舐めてんのか、てめぇ」


 冷たい声だった。その声には、怒りだけではなく、深い悲しみが混じっていた。傷ついた自尊心と、打ち砕かれた誇りが、彼の言葉一つ一つににじんでいた。睨みつける視線に、容赦などない。むしろ、最後の情けを断ち切る覚悟がそこにはあった。


 ハルカは返す言葉が見つからなかった。言葉よりも先に、胸が痛んだ。否、痛んでいたのはずっと前からだ。彼を信じていたからこそ、厳しい言葉を選んだ。彼に限界なんてないと思っていたから、追い込んだ。――でも、それが彼の心を壊していたなんて。


 彼女は龍之介の野球の才能を認めている。異性としても魅力的に思っている。しかしだからこそ、中学生の全国大会で優勝しただけで満足してほしくなかった。それだけなのだ。

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