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148話 ハルカ-3
「俺が活躍し始めた途端に『信じていた』か……。お前、よくそんな掌返しできるな。恥知らずが」
その言葉は、刃のようだった。ハルカは無意識に一歩後ろに下がる。龍之介の目は笑っていなかった。どこか、過去を掘り返すような冷たさを宿していた。
「……え? あの……」
その場の空気が急に冷えた気がした。ハルカの声は、張りつめた冬の空気にかすれながら滲んで消えていく。思いがけない攻撃に、頭の中が真っ白になった。ただでさえ鼓動が早くなっていたのに、龍之介の言葉が胸を鋭く刺した瞬間、心臓が一度止まったような錯覚さえ覚えた。
「中学時代も、俺は俺なりに全力で練習していたんだ。俺はお前が好きだった。辛い練習を乗り越え、プレッシャーを跳ね返して、お前との約束通り優勝を果たした。なのに、告白をこっぴどく断りやがって……」
龍之介の目はまっすぐにハルカを射抜いていた。強い怒りに燃える瞳の奥に見え隠れするのは、壊れた信頼と失われた希望だった。彼は忘れていない。全てを懸けて勝ち取ったあの瞬間を。そしてその後に味わった、胸を引き裂かれるような失望を。