145話 オフシーズンの方針-2
「そうだ。理事長が野球部の室内練習場を用意してくれたな。しかし、まだまだ実績が不足しているし、あまり豪華な施設じゃない。キャッチボールや軽めのノックぐらいはできるけどな」
彼の口調には冷静さがあったが、それでも野球部の未来を見据えていることが伝わってくる。彼はそのまま続けた。
「無理せず、本来の競技に励んでくれ。それに、他の競技での経験や鍛錬が野球に繋がることもあるしな。もちろん、完全に野球から離れると勘が鈍るから、ちょこちょこ練習に顔を出したりはしてほしいが」
「分かりました! では、わたしは冬の間にもっとムキムキになって理想の四番打者に成長します!」
ミオの宣言に、車内がほのかに温まる。彼女の明るさに、みんなの表情も自然と緩んだ。
「ああ。よろしくな」
龍之介はミオとしっかりと握手を交わす。その手の温もりに、お互いの決意が込められていた。他の面々も、それぞれの思いを胸に決意を新たにしている。
「それじゃ、俺も眠るとするか。おやすみ」
「おやすみなさい、龍様!」
ミオの声が弾む。
車窓の向こうには、変わらず冬の夜が広がっていた。バスの振動が、まるで夢の入り口へと誘うように心地よいリズムを刻んでいる。
こうして、桃色青春高校の面々はクリスマスイブを夜行バスで過ごしたのだった。