144話 オフシーズンの方針-1
「――さて、以前にも話していた通り、残りの冬休みはそれぞれの部活動に戻ってくれ。冬休み明けも、1月と2月は練習量を控えめにする予定だ」
バスの揺れに身を任せながら、龍之介は野球部の面々を見渡した。冷たい車内の空気を和らげるかのように、彼の口調は穏やかだったが、その言葉には確かな意図が込められている。
「そのことだけどさ。本当にいいの?」
アイリが少し眉をひそめて尋ねた。彼女の目は真剣そのものだった。
「もちろんだ。みんなの本来の種目は、野球ではないからな。俺の付き合わせて、野球だけに時間を使ってしまうのは申し訳ない」
龍之介は柔らかく微笑む。だが、その奥には責任感の強さがにじんでいた。
「確かにわたしは陸上も大切ですが、もっと龍先輩の力になりたい気持ちもあります!」
ノゾミがまっすぐに言葉をぶつけてくる。頬をほんのり赤く染め、拳を握る姿は、彼女らしいひたむきさにあふれていた。
「ありがとう。その気持ちはとても嬉しく思う。だが、どのみち今は野球にとってオフシーズンだからな。今回の合宿は特殊なグラウンドを持つ旅館を選定したから、大きな問題はなく練習できたが……。1月と2月は寒さが本格化する」
龍之介の言葉に、一同は静かにうなずく。
「確かに、これからの季節は寒いですわね。バレーボール部は体育館で行うので、野球部に比べるとマシですけど……。あ、室内と言えば……」
ユイが何かを思い出したように声を上げる。その仕草に、龍之介は先回りして応じた。