141話 合宿帰りの夜行バス-3
「俺も疲れてはいるけどな。合宿を通じて高まった俺たちの力を前に、興奮が抑えられないんだ」
龍之介は、バスの車窓に映る部員たちの姿を眺めながら、静かに言った。外の景色が流れるたびに、彼の瞳には仲間たちの顔が映り込む。それぞれが流した汗と努力の結晶が、確かな手応えとなって実感できる瞬間だった。誰もが成長し、自らの限界を押し広げてきた。そして――このメンバーなら。
彼は拳を握りしめ、胸の内から湧き上がる熱を言葉に乗せる。
「このメンバーで、来年こそは甲子園を制覇する! そんな未来を想像するだけで、俺はワクワクしてたまらないんだ!!」
バスの車内に響く龍之介の声。その力強さに、仲間たちの視線が一斉に集まる。
「龍様……。私も同じ気持ちです!」
ミオが真っ直ぐな眼差しで賛同する。彼女の手は膝の上で固く握られ、熱意が滲んでいた。他の選手たちも、無言のまま深く頷く。それぞれの目の奥には、確かな決意が灯っていた。
このチームならできる。誰もがそう信じている。
「合宿中の練習もそうだが、最後の試合も大きかったな。これまで戦ってきた相手とは少し特色が異なるチーム編成だったから、良い経験ができた」
龍之介はかつて中学野球で名を馳せたスターだった。しかし、高校に入って一度は野球を離れたため、ブランクがある。
チームメイトのほとんどは他の競技で名を馳せたアスリートたちだ。持ち前の身体能力やセンスは折り紙付きだが、野球の実戦経験は決して多くはない。
そんな面々にとって、練習試合で経験を積む意味は大きい。特に、それまで戦ったことのないタイプのチームとの試合ならばなおさらだ。