奥村斗哉
「ただいま〜」
学校から帰宅した少年の声を聞いて、母が返事をした。
「おかえりなさい、斗哉。手洗いうがいしたら準備して、塾まで送るよ」
「はーい、今やる〜」
奥村斗哉は中学2年生の男子だ。彼には趣味がない、はっきりとした意思もない。小学生の頃やっていたスポーツも、中学の部活では本格化していくことを知って、楽しいだけのままでいいからと辞めてしまった。
そうして空いた時間に、彼は塾に行くようになった。両親は彼に行かせたい学校があるらしい。特にやることも無いので、斗哉はそれに従っていた。
周りが趣味だ運動だ恋愛だと動き回ってるのも、全くと言ったら嘘になるが、彼には興味がなかった。
自分でやろうといった意思がない彼には、勉強だって続く訳がなかった。塾と学校を行き来する生活に飽きてきていた。
そんなある日、斗哉の友達の三楠悠真に誘われて、親に黙って塾へ行くのをサボり、家を抜け出した。
2人の足だけではそう遠くへ行くことはできないが、いつもなんとなく通ってるだけの道でも、普段通らない道へと繋がっている。
2人は顔を合わせると、互いに頷いて知らない道へと進んでいく。
「それでさ〜あいつが…って悠真?」
話ながら進んでいくうち、斗哉は悠真の声が、姿が見えないことに気づき、周囲を見渡した。
さっきまで通ってきた道は無くなって、どこを見ても草が茂った道無き場所に来てしまっていた。