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コロナ禍を生きた人々  作者: 西川悠希
行政対応編
64/75

≪GT編 05話 -怒りの日- (3/5)≫

「ある日、男達は試験に受からないと運動会に出られない。試験に合格できるようにしてくれ。と頭を下げました。かわいい男の子は快諾しました」


 なるほど。ショウはありがちな話だが定番の流れだと感じた。


「かわいい男の子は言いました。わかったよ、僕が試験中に合図を出して答えを教えてあげるよ」


「カンニングかい!」


「試験は明日に迫っています。とても勉強を教えている余裕などありません」


 突っ込まれたからといって設定を足すのはどうなのか。


「かわいい男の子は男達に合図を教え、そして、試験に臨みました。その結果―――」


 リョーコは一呼吸置く。ショウもリョーコの続きの言葉を待ってあげた。


「男達は全員、試験に不合格となり、追試のため運動会には出られませんでした」


「先生」


 ショウはリョーコに挙手をして発言を求める。


「そして、男達はかわいい男の子を人気の無い屋上の倉庫に連れ込みました。ああ、なんてことでしょう」


「先生!」


 ショウはリョーコに強く発言を求めた。


「なによ、お話はこれからなのに」


「なんかおかしいですよ。どういう話なんですか」


「実は男の子と男達の通う学校の隣町には、女達だけが通う学校があったのです」


 発言はスルーされ、さらに昔話は不可解な方向へと進む。というか実はってなんだ、実はって。

 ショウは色々と物申したかったがあきらめた。


「数日後、女達の学校は不思議な噂で持ち切りでした。なんと隣町の男しかいない学校にとてもかわいい女の子のようなお姫様がいるではありませんか!」


 ショウは頭痛が痛くなった。


「きっかけは一枚の写真でした」


「センパイ、もうやめにしませんか、昔話」


「なんでよ。これからがいいところなのに」


「結論を言ってくださいよ。今は仕事中ですよ、無駄話なんかしないで」


「もうしょうがないわね。結論はね、かわいい男の子には何を着せても似合うって話よ」


 エッヘンとリョーコは言ってのけた。


「それ、ただのセンパイの趣味じゃないですか! 昔話ってもっと教訓めいた話ですよね? おかしいですよ!」


「キミもほんとワガママ言う子ねぇ」


 おかしい。俺は決して間違っていない。ショウは心底、心の中で主張した。


「それなら最初から女子校で男子校にお姫様がいる噂が流れた。でいいでしょ。最初の成績の良い子と運動部の話はなんだったんですか。てっきり俺はそっちが主題かと思いましたよ」


 言ってて悲しくなるくらいバカバカしい話の内容だとショウは思う。そして事実、悲しくなった。


「ああ、そっちね。そっちは試験合格させられなかったから、倉庫に連れ込まれて女の子の服着せられて、その撮影写真が女子校に流れて高値で取引されたのよ。最初は男の子も恥ずかしがってたけど、すぐにノリノリになって自ら撮影に臨むように」


「……その話、昔話ですよね? なんでそんな無駄に具体的なんですか」


「それは、そのー……ほら、嘘つきほど具体的に嘘をつくっていうじゃない。さもあったかのように、ね?」


 それはそうなのだが、同意を求められても困るというのがショウの本音である。


「それじゃあ結局、何でカンニング失敗したんですか。答えの合図を出してたんでしょ」


「ああ、それはね。運動部の男達が男の子の出す合図を理解できなかったってことらしいわ」


「……どういうことですか」


「うん、だから合図も決めて、その通りに合図も出してたけど、その合図を男達が覚えられなかったの」


「バカすぎませんか」


「まあ一夜漬けのぶっつけだからね。男の子もさすがにそれは想定外だったみたい」


 ところどころ本当にあった話かのように語っているのが気になるのだが、そこは触れてはいけない気がした。


「あ、ちなみに私。女子校出身」


「聞いてませんよ! 無駄に信ぴょう性を煽るのはやめてください。いい加減話を戻しましょうよ話を」


 ショウは両手で箱を作って、置き換える仕草をする。


「何の話をしてたっけ?」


 聞かれてしまった。そして、ショウも何の話をしていたのか、思い出せなくなっていた。


「かわいい男の子に女装させたいのはよくわかりましたよ」


「あら、やっぱり興味あるんだ」


「ありませんよ、これっぽっちも!」


 この上なく否定するショウに、リョーコはフフッとほほえましくなった。


「ま、でも社会に出たら、仕事って個人の力でするものじゃないでしょ」


「それはそうですけど」


 ようやく話が戻った事に、ショウは安堵した。とはいえ、まだまだ油断はできないが。


「個人の力よりもみんなの力。……小須戸クン個人の仕事は60点でも、そこから誰かが引き継げて80点にできる。それか、誰かの仕事を彼が引き継いで60点にできるのだとしたらどうする?」


「それは……」


「私には彼がいたし、彼には私がいた。彼は何をやらせてもだいたい60点には仕上げてくるから、頼りになったのよ」


「やっぱり弟じゃないですか!」


 ショウの主張にリョーコは笑った。


「相棒って言いなさいな。確かに色々、指摘もしたわ。ちゃんと身だしなみに気を使えとか。寝る前は歯を磨けとか」


「かーちゃんじゃないんだから」


 まるで子供をしつける母親である。


「彼は言えばわかる人間だったのよ。ただ言われなかったから気づかなかった、気づけなかっただけ。見た目で判断されてしまってね」


 にわかには信じられないが、それはリョーコの言う限り、真実なのであろう。


「そして、さっきの話の男達も勉強の仕方を知らなかっただけで、男の子が教えるべきはカンニングの合図ではなく勉強の仕方だったかもしれない」


「……じゃあ、センパイは彼らの出した報告書が小須戸の成果だと」


 ショウはあえて直前のリョーコの発言を聞かなかったことにして、自分の聞きたい話に誘導した。

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