いや、表でもグイグイ来るのか
お詫びの連日投稿です…
あれ、いつの間に耳がバグったんだろうか。
聞きたくなかった幻聴が聞こえたな。
「えーっと。すまん。もう一回行ってくれ」
「はいこれ、あなたの箸ね」
「聞けや」
有無を言わさぬ勢いで食事を勧めてくる。
断るのも無理そうだし、ここは腹をくくるしかないか…。
渋々渡された箸を受け取り、弁当へ向ける。
「じゃあ…この唐揚げもらうな」
どれを食べても大丈夫だろうと踏んで、唐揚げに箸を落としていく。
しかし、前から来た手に腕を掴まれてしまい、唐揚げまで到達することができなかった。
「なんだ」
「おすすめは、たこさんウインナーよ」
そういって、ウインナーの下へ誘導される。
ごねても損しかないため、仕方なくウインナーを取る。
よく見ると、ただのウインナーではなく、タコのかたちに切られたウインナーだ。
「うん。うまい」
「…そう。よかったわ」
凄いな。一昨日くらいだっけ、自炊しないとか言ってたの。
まさか、一日でここまで手料理が上達するなんて。
「まだまだあるから、どんどん食べてね」
その後、弁当の大半を食べさせられ、「私の弁当を食べたんだから、あなたのを寄越しなさい」といって、さっき学食で買った菓子パンを食べられてしまった。
このやりとりのせいで、周囲からの刺すような視線が集中した。
だめだ。こんなことやってたら、ますます誤解されるじゃないか。
それに、こんな殺意の籠った視線を浴び続けられるほど、俺のメンタルは鋼じゃない。
そのうち、物理的な被害もきかねん。
流石に、優里に被害は及ばないだろうが、万が一ということもあるし…。
なんとかしてあの写真を消してもらうために、早急に手を打たないと。
異常なほど静かな優里の隣で、そんなことを思案する。
「雄馬…」
昼休みの乱入にメンタルを摩耗しつつ、なんとか切り抜け、放課後。
優里が深刻そうな表情を見せないようにと、俯きながら声をかけてくる。
「どうした?」
「あのね…。実は…まだ筋肉痛のせいで、まともに歩けないんだ…」
朝もそんなこと言ってたな。
あのときは意外と余裕そうに振舞ってたけど、実はそうでもなかったのか。
…あれ、じゃあ体育は?
筋肉痛なんて元からなかったかのようにバスケしてたけど…。
「だからね…ぼくん家の近くまで、おぶっていって欲しいなー…なんて」
珍しく自信なさげな顔で尋ねてきた。
…そういや、中学の頃にもこんなことあったな。
なんてことを頭の傍らで思いだしつつ
「おぶってくぐらいなら別にいいが…。本当に大丈夫か?」
「歩けないけど、大丈夫だよ」
そう言って、朝のような笑顔に切り替えてから、帰り支度を始める。