わたくしが主人公のはずなのに!!!
もともとわがままな気質な侯爵令嬢は、前世の記憶を取り戻すことで、わがままで傍若無人な性格が悪化した。前世でも、家族にとってのやっと授かった一人娘ということで、でろっでろに甘やかされて育ったといういきさつがあり余計に悪化したのだと思われます。そんな彼女は自分の都合のいいことしか見えず、聞こえず、知らない。これからどうなっていくのやらとうわさされているある意味有名なお人です。
わたくし、アリーサ・フォン・フーリッシュと申しますの。フーリッシュ侯爵家の一人娘ですわ。
お母様は、わたくしが二歳のころに他界し、今はフーリッシュ侯爵家の当主であるお父様だけが唯一の肉親だと思っておりますわ。
だって、わたくしの言うことを聞いてくれない悪い人たちは、最早肉親ではないでしょう?赤の他人だわ。
フフフッ、この屋敷でも使用人たちは皆わたくしの言うことを聞いてくれない悪い人だったので、消えてもらいましたわ。もうここには、わたくしの言うことをちゃあんと聞いてくれる善良な使用人しかいませんわ。悪い人たちにはなんですけど、ざまあみやがれですわ。
今日は、第二皇子との顔合わせなんですって!周りの方も分かっていますのね。わたくしが王妃であるべきだと。気品と才能にあふれたわたくしを婚約者になんて.......さすがですわね!ですけれど、第二皇子という響きが気に入りませんわねえ。なんで“2”なのかしら、わたくしがこの世界で一番素晴らしい人物であるように、わたくしに見合う一番の“1”がいいですわ!顔合わせで一応顔の美しさを見てから、お父様に相談しようかしら♪もし、わたくしに見合う美しさなら、婚約のこと考えてあげなくもないですわよ!第二皇子!
・・・・・・顔合わせの場にて・・・
「今日はどうも来てくれてありがとう。アイルのために来てくれてうれしいよ。アリーサ嬢という可憐な御令嬢に婚約者になってもらえるなんてこんな喜ばしいことはないよ。」
___んもうっ!なんて素敵なんですの!さすがですわね!キングって感じで王者の風格があって、素晴らしい色香がありますわね!イケメンですわね!.......あれ?“キング”?“イケメン”?あれ?なんですの?頭がガンガンして、景色がグルグルしていますわ。.......はっ!わたくし、もしかして乙女ゲームに転生しましたのね!?わたくしさすがですわ!この世界の主人公になるなんて!素晴らしいですわ!彷彿としてしまいますわね。ほら、そこに座っている第二皇子。どうぞご覧になって。主人公のご尊顔ですわよ。________
「どうかな?アリーサ嬢?アイルの第一印象は。好きになれそう?」
__ガタッッッッッッッッ
「最っ高ですわ!」
「そっ、そうかい。よかったよ。」
____あれ?何がよかったんですの?まあいいですわ。私が世界の主人公ですから、後でどうにでもなりますし。フフフッ!何人侍らそうかしら?5人?6人?フフフッ!笑いが止まりませんわねっ!_______
・・・・・・・・フーリッシュ侯爵家にて・・・・
「アリス?今日の婚約決まってよかったね?最高だったんでしょ?第二皇子。」
________えええ!あのよかったって、この婚約が決まってよかったってことですの?ああ、なんということですの。これじゃあ、第二皇子っていう響きが気に入らないから第一皇子に変えてほしいなんて言えなくなってしまいましたわ。だって、一度言ったことを覆すなんてわたくしのプライドが許しませんもの。________
「えっ、ええ!最高なんですの!オホホホッ!」
「そっかあ。じゃあよかったんだね。もしいやだったら、第二皇子を暗殺して、婚約をなかったことにしようと思ってたんだ。」
__________嘘ん!そんなこと思ってたんですの!?お父様!だったら、プライドなんかかなぐり捨てて嫌だと言ってしまえばよかったですわ!_______
「そうなんですのね......あっ、お父様!わたくしそろそろ護衛が欲しいんですの。わたくしにふさわしい見目麗しい護衛が欲しいんですのよ。」
「確かに、こんな可憐なアリスにはたくさんの悪い虫が飛んでくるかもしれないから、殺虫剤として護衛を雇おうか。でもアリス?もし、護衛が殺虫剤として役立たなかったり、虫になってしまったりしたら、即私が持っている殺虫剤で殺すからね?」
________虫?殺虫剤?よく分かりませんけど、お父様ですもの。わたくしの害になることなんていたしませんよね。___________
「もちろんですわ!5人か、6人でお願いします。」
「えっ!6人!?それだけでいいのかい?最低20人~30人はいるでしょう?危険だよ?」
「え?お父様が探す護衛なのに、30人もいるんですの?お父様が探してくる護衛ならば通常よりも圧倒的に腕の立つ方たちでしょう?わたくしにふさわしい護衛なんですから。」
「もちろんだよアリス!すぐに探してくるよ!明日まで待っていて!」
+*+*+*+**+*+*+*それからは、素晴らしい日々でしたわ。好きなものを食べて、周りの護衛たちを愛でて、わたくしの言うことを聞いてくれない悪い人たちを消して......天国で過ごしているかの気分の良さでしたけど、たった一つ気に入らないことがありましたの。第二皇子にいくら婚約破棄を願うお手紙を出しても、一言もお返事を頂けませんの。第二皇子の分際で生意気ですわ!それに、神童ですって?わたくしこそが神童ではありませんか!気品と才能にあふれているわたくし以外に神童の名が似合う方がおりまして!?いないに決まっているじゃない!?本っ当に気に入りませんわ!+*+**+*+*+*+*+*
・・・・・・・卒業パーティーにて・・・・・
_________やっと!やーーーーーーーーっと婚約破棄できますのね!?ここまで我慢してきたわたくし素晴らしいですわ!第二皇子の分際でわたくしの婚約に縋り付いてきたのをここで成敗してやりますわ!____________
「アイル・スティル・レイモンド殿下!この場で申し上げたいことがあるのです!こちらに来ていただけませんこと?」
_______あら、気合のあまり、語尾に力が入ってしまいましたわ__________
「なんだい、いきなり。とても無礼だね」
__________ムキーーーーーーー!生意気ですわ!第二皇子の分際でこの世界の主人公であるわたくしに口を利けるのだから、ありがたいと思うべきなのに、言うに事を欠いて無礼ですって!?あなたのほうが無礼よ!_________
「まあ、申し訳ありません。でも、わたくしたち婚約者同士ですし別に構わなくてよ。」
_______なんで、わたくしが謝らなければいけませんの!?婚約者という立場を考慮しても、その態度は許せませんわ!それに、あんだけ婚約破棄を願うお手紙を送ったのに一言もお返事が来なかったということは、わたくしのことをとても愛しているのでしょう?わたくしの好きなタイプじゃないのでツンデレとか勘弁してくださいまし。____
「って、そんなことはどうでもいいんですわ。わたくしは、あなたに婚約破棄してほしいんですの。わかりますわよね?こ・ん・や・く・は・きですわ。殿下がわたくしをとても愛しているからと、どうしても婚約するといってなかなか破棄してくださらないから、わたくし公の場で直談判しにきたのです。わたくしはここにいる新たな婚約者と、愛人たちとこれから仲良くしたいので、さっさと破棄してくださいましな。」
___________ふふんっ!ここはわたくしの世界!こんな公の場でわたくしにこんなことを言われたら恥をかくしかありませんわよね!?フフフッ。いい気味ですわ!今日の余興のことを思って皆さんに楽しんでもらうために、事前にここにいる皆様に面白いことがあると予告しておきましたの!安心して、存分に恥をかきなさい!_________
「ふふふっ、質の悪い冗談もほどほどにしなよ。そんなセリフを聞かされたら僕の耳が腐ってしまうじゃないか。さっさと黙ってほしいなあ。」
__________なんですって!?わたくしの声はかの有名な音楽団に“天使の歌声”だと褒められるほどの美声ですのよ!?それなのに、それなのにっ!耳が腐るですって!?もう許しませんわよ!?もうゆるさない!!________
「はいっ!?なんですって!?冗談なんかじゃないですわ!さっさと婚約破棄なさいまし!」
_________あなたは、さっさと婚約破棄するだけでいいのよ!黙ってらっしゃい!!______
「はははっ、一応言っとくけどね。僕は、君のことなんかひとかけらも愛していないよ。それにこの婚約は僕たちが決めたんじゃない、家同士の政略結婚だ。僕自身が婚約破棄したくないと思うわけないじゃない。思うとしたら、それは君の父上か、陛下だけだね。それにさっきから、あまりにも、無礼すぎるよ、たとえ婚約者だとしても、ある程度の礼節は重んじるものだ。婚約者だからと考慮したところであまりにも不敬なんだよ。それに、婚約者のいる身で、新しい婚約者と、愛人たちだって?ただでさえ、婚約者を勝手に新しく作って印象が悪いのに、愛人だって?この国は、貞淑であれをモットーに、淑女教育をされている。もちろん、紳士たちも。そんな国で愛人なんか作っているとなったら誰も婚約してくれないに決まってる。見てごらん。隣にいる君の自称婚約者と愛人たちの顔を。苦渋に歪んでいるだろう。きっと、自分たちが婚約しているご令嬢と逢瀬していたなんて知らなかったんだろうね。しかも王族の。それなのに自信満々と語り続けて、あほらしい。君は一体学園で何を学んできたんだい?本当に信じられない。周りを見てごらん、この視線は嫌悪と、拒絶と、蔑みと、嘲笑の視線だよ。誰も心配そうな顔なんてしていないね。君を好意的にみている人なんていないんだよ。それに、こんな公の場所で、人を馬鹿にするような発言を大声で言うなんて、貴族として、いや、人間としてどうかと思うよ。さすがに、もう家同士で決められた婚約だとしてもこんな公の場で騒ぎを起こしたからなくなるだろうね。もう君は、貴族の令嬢なんかじゃなく、罪人だ。」
___________なっ、なっ、なっ、なんですってぇぇぇぇぇぇぇ!!!???愛していない?
?噓でしょう?わたくしのどこに愛せない要素があるの?理解できないわ。それに不敬?あんたが不敬よ!世界の主人公のわたくしになんてことを言うの!?それに、ていしゅく?ていしゅくって何よ!?そんな言葉知らないわ!何を言っているのよ!?それに苦渋に顔がゆがんでるですって!?ニッコリ笑顔じゃない!?視線?尊敬、恋慕、憧れの視線でしょ!?それ以外に何があるっていうのよ!!わたくしが世界の主人公なんだから、みんなに愛されているに決まっているわ!!なんで好意的にみられていないっていうのよ!罪人だなんて認めないわ!絶対に認めないわ!!!__________
「おい!そこの騎士たち!さっさとこの連中を取り押さえて、不敬罪で地下牢獄へ連行しろ!」
「「「「「はっ!」」」」」
________ろうごく?なんで私が牢獄なんかに?牢獄へはわたくしの言うことを聞いてくれない悪い人が行く場所でしょ?____________
「なによ!私悪いことしてないじゃない!?なんで牢獄なんかに連れていかれるの!?訳わかんない!?
私は貴族令嬢よ!後で、お父様にあんたたちを罰してもらうんだからね!!!!」
________いたい!!!痛いじゃない!!私に対する態度じゃないし、対応も最悪じゃない!!!後でお父様にわたしへの不敬罪であなたたちが逆に牢獄に入ることになるわ!今に見てなさい!!!!_______
「もう!痛いのよ!!!離してよぉ!!」
_______ほんとに痛いのよ!!痛いわ!!離して!!!離してったらあああ!!!!___________
_________数日後____・・・牢屋にて・・・
「___ス___ア_ス_____アリス!!大丈夫かい!?アリス!!!」
______なんでしょう?......はっ!!お父様ですわ!!あの不敬な方たちを罰しもらわなきゃ!!!________
「お父様!!お父様!!わたくしの言うことを聞いてくれない悪い人がいましたの!!罰してくださいますよね!?お父様!お........と...う.........さま..............?何で!なんで牢の中にいるんですの!?ここから出してくれるんですよねえ!?お父様はわたくしの言うことを聞いてくれない悪い人ではなくて、何でも言うことを聞いてくれる善良なお方でしょう!?」
「アリス、アリスごめんね。わたしの、お父様の力不足でフーリッシュ侯爵家はお取り潰し、私たちは斬首刑に決まってしまったんだ........アリスの、アリーサの肉親で、善良な人としていられなくなっちゃったよ.............せめて、せめて最後まで一緒にいるからね。」
________う.........そ.........うそでしょう?そんなことありえないわ。フーリッシュ侯爵家がお取り潰し?わたくしたちが斬首刑?何かの間違いですわ。きっと........きっとそう。わたくしはこの世界の主人公ですもの。__________
「フ.....フフッ。お父様ったら。御冗談が過ぎますわよ。わたくしたちのおうちがお取り潰しで、わたくしたちが斬首刑ですって?笑えない冗談はよしてくださいまし。」
「アリス、アリス....アリーサ。これは冗談なんかじゃないんだ。現実なんだよ。お父様の力不足でご免んね。」
「うs¥;j;ljlkjl;kそかjslk;lsjッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!うそよおshふぁksjdhlkjshdlkじゃhksjh!!!!!!!!!!askdfhoscvaqwuefhaksjhoaskdfalksjhflajhsdlfkja!!!!!sh.ausud........」
「アリス!アリス!?どうしたアリス!!!アリーサ!!!アリーサァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッ!!!??????」
+*+*+*+*+*+*+こうして、思い込みの激しかった、乙女ゲームの世界の自称主人公、アリーサ・フォン・フーリッシュの人生の幕は閉じたのだった+*+*+*+*+*+*+*
ここまでお読みくださりありがとうございました。
主人公が最初の顔合わせで、好もしいと思ったきっかけである「顔を赤らめた」ところは、自分に彷彿としていたんですね.........唯一好ましいと思われた行動がこんな経緯で行われたと知っていたら、第二皇子は、最初から蔑みの目線を令嬢に送ったのでしょうか?自称婚約者たちも、本当に男女の中を想像させるような仲だったのでしょうか?思い込みが激しいアリーサが事実を述べているとは考えにくいですね。