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芹沢悠馬は更生への道を歩み始める?

ご覧いただき、ありがとうございます!

今回は番外編! 芹沢悠馬視点でお送りします!

■芹沢悠馬視点


「あああああ! クソッ! クソッ! なんでこんなことになったんだよおおおおお!」


 僕はオフィス・セリザワに用意されている自分用のプライベートルームで、僕の目に映るもの全てをメチャクチャに殴り、壊し、投げ捨てる。

 それこそ、自分の拳が傷ついたりすることもお構いなしに。


 すると。


 ――バタン!


 突然勢いよくドアが開け放たれ、そこには顔面蒼白のお父さんがいた。


「お父さん! 早くアイツ等をメチャクチャにしてやろうよ! お父さんならできるよね!」


 そうだよ! 芸能界すら牛耳っているあの(・・)お父さんなんだ!

 お父さんなら、僕をこんな目に遭わせ、オマケに僕のユーリをまるで自分のモノだと勘違いしている久坂大和を、永遠に太陽の下に出られないようにしてやることだってできるんだ!


 僕は期待を込めてお父さんを見つめると。


「このクソバカがあああああ!」

「ギャッ!?」


 痛い!? な、なんでお父さんがこの僕を殴るの!?

 僕はこの事務所の看板俳優なんだよ!? 顔が命だってこと、一番知っているのはお父さんのはずなのに!?


「フー……! フー……! オマエが……オマエが使えないせいで、この私の事務所は潰れるんだよ! どうしてくれるんだ!」

「え……?」


 え? え? 事務所が潰れる?


「な、何で……?」

「何でもクソもあるか! 私達は、あの“女帝”に明確に敵だと認定されてしまったんだよ!」


 そう言うと、お父さんは肩を震わせながら膝から崩れ落ち、床に両手をついた。

 だけど。


「そ、そんなの! 悠里のお母さんもあの久坂大和に騙されてるんだよ! だからこそ、悠里も悠里のお母さんを救い出すために、あの憎い久坂大和を排除しないといけないんだ!」


 そうだよ! 全部、久坂大和のせいなんだ!

 だったら、僕達が真っ先にするべきは、あの久坂大和を……!


「ア、アハハハハ……私の息子は、ここまでバカだったのか……」


 僕があの男に憤る中、お父さんは乾いた笑いを浮かべている。


「お父さん! こうなったらこの僕自ら、あの久坂大和を消してみせるよ……!」


 僕は決意を込め、拳を強く握りしめた。

 あの久坂大和を消して、今度こそ、僕は悠里を手に入れるんだ……!


「ハ……ハハ……貴彦の奴も今じゃすっかり毒が抜けて“女帝”にべったりだし、私の地位も財産も全てメチャクチャ……もう、おしまいだ……ア、アハハハハ……」


 お父さんはブツブツと何か言っているけど、それもこの僕がどうにかすれば全部解決するんだ。


 待っててね、悠里、お父さん……!


 僕が……この物語の主人公である僕が、みんなを救い出してあげるから!


 ◇


「……まだ来ない、な」


 僕は路地の角から、あの久坂大和が住むマンションを睨みつける。


 ここで……僕の悠里がアイツに……!

 そう考えただけで、僕は胸を掻きむしりたくなる!


 まるで泥棒猫のように僕の悠里を攫い、しかも、悠里を洗脳して無理やり懐かせるだなんて……!


 それだけじゃない!

 あの藤堂エルザだって、あんなにこの僕を慕っていたのに、これもあの久坂大和が口先で騙して僕の悪口を言ってイメージを落として……!


 大体、なんであんなパッとしないモブなんかに、悠里も藤堂エルザも、あの風紀委員長さえなびくんだよ!

 こんなの、絶対卑怯な手を使っているとしか考えられない!


 それこそ、暴力と洗脳で訴えるかのような……!


「フ……フフフ……僕が来たからには、もう大丈夫だからね……?」


 カバンに手を入れて中にあるスタンガンを握りしめると、自然と僕の口の端が吊り上がる。


 だけど、それも仕方ないよね?

 だって……僕がこれで久坂大和を排除して、今度こそ悠里の洗脳を解くことができるんだから。


 その時……突然、僕は肩をポン、と叩かれた。


 鬱陶しい。


 そう思いながらも、これから行う久坂大和への粛清のことを考えると邪魔される訳にはいかない。

 僕は渋々後ろへと振り返ると。


「……なんだ、君か」


 そこにいたのは斎藤一哉だった。

 だが、彼の目は少し虚ろで、身体もどこかフラフラとしていた。


「芹沢……」

「うん? 何だ?」


 ああもう……僕は忙しいのに面倒なヤツだ。


「ひょっとして……あの久坂大和達を……?」

「そうだよ」


 これ以上相手をするのも面倒な僕はその会話を打ち切り、再びマンションの入口に目を向ける。


「なあ……俺にも手伝わせてくれ」

「……は?」


 手伝う? この僕を?


「君は何を言っているんだ?」

「……俺もあの二人には恨みがある。俺も、アイツ等をメチャクチャにしないと気が済まない……!」


 そう言うと、斎藤は今にも人を殺してしまうかのような視線でマンションを睨みつけた。


「へえ……」


 ……最後くらい、この僕の役に立たせてやるか。

 それに、いざとなればコイツのせいにすればいいし。


「……分かったよ。本当は君を巻き込みたくなかったけど……君は、僕の親友だからね……その気持ち、分かるよ」

「っ! ……ありがとう、やっぱり芹沢は俺のたった一人の親友だ」

「お互い様だよ」


 僕と斎藤は、お互いの拳をコツン、とぶつけ合う。

 ま、こうやってしてやると、彼も喜ぶからね。


 さあて……それじゃ後は……っ!?


 現れた!


「く、くそう……! あのクソ野郎、悠里と手を繋いで嬉しそうにしやがって……!」


 ダメだ……! 怒りと憎しみで、僕の中にある獣を抑えつけられない……!


 いや……違う!


 今こそ、僕の中の獣を解放してやる時なんだ!


 僕はチラリ、と斎藤を窺うと、彼も決意の籠った目で力強く頷いた。


 さあ……狩りの始まりだ……!


「ハイ、そこまで」

「「…………………………は?」」


 いきなり後ろから気の抜けた声を掛けられ、思わず振り向くと……そこには、やたらと体格のいい黒服の大人が数人立っていた。


「さすがにそこまでしてしまっては言い訳もできないな。ああ、もちろん写真も押さえていますよ」

「な、なんのこと……ヒッ!?」


 すると、僕と斎藤は黒服の男達にガシ、と肩をつかまれ、そのままどこかへと誘導されていく。


「い、一体この僕をどこへ!?」

「なあに、あの車に乗って目的の場所まで移動してもらうだけですよ」

「「ハア!?」」


 車に乗って移動だと!?

 この僕をどうするつもりなんだ!?


「ああ、そうそう。一応二人のご両親には許可はもらっていますから」

「許可だと!? 嘘を吐くな! お父さんが、この僕が連れ去られることに『うん』と言うはずがないだろう!」


 そうだとも! お父さんは一人息子であるこの僕が一番大切なんだ!

 また適当なことを言って、人さらいをしようとしても無駄だからな!


「まあまあ。あなた達二人は、これから長野の山奥にある民間の更生施設に入所することになったんです。もちろん全寮制で」

「「ハアアアアアア!?」」


 何だよソレ!? なんで僕達がそんなところに入らないといけないんだ!」


「なお、お二人に拒否権はありませんから」


 そう言うと、黒服の男はニイ、と不気味に笑い、僕達を車の中へと無理やり押し込んだ。


「さあ、行きましょうか……おっと、大事なことを忘れていましたよ」

「だ、大事なこと!?」


 ま、まだ何かあるのか!?


「お二人は“攻め”と“受け”、どちらが良いですか?」

「「…………………………は?」」


 僕達は黒服の男の言っている意味が分からず、思わず呆けた声が漏れてしまった。


「ああいえね? これから入所される施設、陸の孤島みたいなところですし、施設には男しかおりませんので、あらかじめ決めておかないとこれからの生活が大変かなあ、と思いまして」

「「?????」」


 僕達は結局何のことか分からないまま、その施設へと向かう車の中でただ小さくなっていた……。

お読みいただき、ありがとうございました!


番外編の芹沢悠馬視点はいかがだったでしょうか?

当初はもっと暗く重い内容にする予定でしたが、さすがにひどかったのでこんな感じにまとまりました!


また、次の番外編として、藤堂さん視点をお届けします!

しかも、公開は大晦日の19時予定!

藤堂さんがアイドルらしくあの番組に出演します!


少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[良い点] あらま。まあ女の子がいないなら誰かが女の子の代わりにならないとね。うん。強く生きて
[一言] ああ、どこぞの国のジングルねた…/w 新兵はウケ、だったな。
[良い点] 更新感謝です。 死なば諸共、芹沢×斎藤END♂ これならまだ海兵隊にでも入れられた方がマシだったのでは…うほっ。 最後はエルルンですね。ヤマトくんとユーリちゃんは蕎麦食べながら締めとい…
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