久坂大和達は大人達の力を借りて斎藤一哉を撃退する。
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「さて……大人しくついて来てもらおうか」
ユーリ達を送る途中、人気のない場所に差し掛かったところで、斎藤と不良らしき男が数人、俺達の前に現れた。
「お、おい! 本当にあのエルルンだぞ!」
「お、おう! しかも他の女の子二人も、スゲーレベル高くね?」
そして不良達は、藤堂さんを始めユーリや木戸先輩を見て色めき立つ。
つーか。
「おい斎藤、俺達を襲うにしても、ちゃんと人選はしたほうが良かったんじゃないか?」
「フン……余裕だな」
俺は不良達を一瞥してからそう告げると、斎藤は鼻を鳴らして不敵に笑う。
なんだよ斎藤、せっかく忠告してやったんだから、素直に受け入れたほうがいいと思うぞ?
ま、結果は同じなんだけど。
「なあ久坂君、もうコイツ等を痛めつけていいのか?」
「ちょ!? 誰がそんなこと言いました!?」
好戦的な木戸先輩が、嬉しそうにしながら腕を振り回すけど、そんな話じゃなかったよね!?
と、とにかく早めに決着つけたほうが良さそうだ!
「フ……風紀委員長までいるのに、この程度の人数だと思っているのか?」
斎藤はニヤリ、と笑いながら指を鳴らすと。
「おい、本当に俺達の好きにしていいんだよな?」
「ああ、もちろんだ。ただし、ボブカットの女以外はな」
ボブカット……ユーリはあのクズストーカーにお届け、ってことか。
「はあ……」
俺はコイツ等の浅はかさに、額を手で押さえ、思わず深いため息を吐いた。
「フフ……なんだ久坂、もう諦めたのか? といっても、お前はここで痛い目に遭うんだがな。それこそ、二度と中岡悠里に近づこうとは考えなくなるほどに」
斎藤がそう言った瞬間。
――ガッ!
「うお!?」
「ふざけるな! ヤマトに何かしたら、それこそただじゃおかないんだからね!」
激高したユーリが、斎藤目がけて思い切りカバンを投げつけると、キッ、と睨んで怒鳴りつけた。
「ちょ!? ユーリ落ち着け!」
「っ! ヤマト! だけど!」
とりあえず俺はユーリを宥めるが、彼女は今にも齋藤につかみかかりそうな勢いだ。
ヤ、ヤバイ……本当にサッサと終わらせよう。
「ま、まあ、斎藤はあの“沖田晴斗”もとい芹沢悠馬の差し金で、この場所で俺達を集団で襲いに来た。それで合ってるよな?」
「フン。その通りだが、そんなことをわざわざ聞いてどうするんだ?」
俺の質問に嬉しそうに答える斎藤……あ、コイツもあのクズと一緒で馬鹿だ。
「や、オマエさ……今の会話、録音されてるとか、考えたことないの?」
「もちろん考えているさ。だが、そんなものは、お前達を攫った後に全て隠滅してしまえばいい」
「だーかーらー、オマエ等がこうやって襲撃してくることが分かってるのに、なんで俺達が何の用意もしてないって思うんだよ」
そう言うと、俺はポケットからスマホを取り出すと。
「皆さん、よろしくお願いします」
「……は?」
すると、黒いスーツを着た強そうな人達がわらわらと現れた。
「な!? な!?」
突然のことに、困惑する斎藤。
そしてそれを見ながらニヤニヤと嘲笑うユーリ達。
これ、俺達が襲撃される可能性があるってユーリのお母さんに伝えたら、実際に襲撃されるまでの間、俺達の位置を確認するためのGPSと、護衛をつけてくれたんだよな。
男のプライドはないのかって?
そんなもの、ユーリ達を危険にさらす可能性を考えたらより安全な策に乗るに決まってるだろ。プライドなんざポイだ。
それをユーリのお母さんにもそう答えたら、何故か逆に褒められた。
「ま、そういう訳で、オマエ達全員、暴行・脅迫未遂ってことでこちらの皆さんに警察に連れて行ってもらうから。あ、写真も撮られてるし音声データもあるから逃げられないからな」
そう告げるが、それでもなお不良達は一目散に逃げ出した。
まあ、後は大人に任せるとしよう。
「さて、オマエは逃げないの?」
俺は地面にへたり込んでいる齋藤の肩をポンポン、と叩くが……うん、放心して俺の声が聞こえてねえ。
「ヤマト!」
「うん、しっかしあっけなく終わったな」
「だねー」
俺とユーリは呆れた表情を浮かべながら、目の前の光景を眺めていた。
その時。
――ピリリリリ。
「ん? だれのスマホだ?」
突然鳴り響いたスマホの着信音に俺達はキョロキョロと周りを見回し、音の発信源を探すと……あ、斎藤だった。
「なあ、出ないの?」
「っ!」
そう言うと、斎藤の身体がビクッとなり、慌ててポケットからスマホを取り出すと。
「ももも、もしもし!?」
うわあ……斎藤、声がメッチャ裏返ってる。
「ダダ、ダメだ! もう俺達はオシマイなんだあああああ!」
そして、思い切り叫ぶ斎藤。
「とりあえず貸せよ」
「あっ!?」
俺は斎藤からスマホを取り上げ、ハンズフリー通話に切り替えた。
『おい斎藤! 斎藤!?』
スマホの向こう側から、クズの焦った声が聞こえる。
「よう、クズ」
『っ! その声……久坂大和か!』
「うるせーよ。とにかく、斎藤のバカは失敗してこれからケーサツに連れてかれるから。オマエも覚悟しとけよ?」
『ハ、ハア!? な、何を言ってるんだ!? 僕は無関係だ!』
はあ? コイツ、何言ってるんだ?
「ホントにクズだよね。全部この斎藤く……クズ二号でいいや。二号がアンタの指示でやったって白状したよ!」
『そ、それが何だっていうんだ! そんなものは知らない!』
「や、二号の台詞を録音してあるんだけど……聞く?」
『っ!?』
クズの息を飲む音が聞こえる。
『……フン、別に僕は斎藤に指示なんてしていないし、仮に斎藤がそう言ったからって、僕には関係ないよ。まあ、いざとなったら事務所の力でどうとでもなる』
おーおー、このクズ開き直りやがった。
だけど。
「何言ってるの? アンタの芸能事務所なんか、もうすぐ潰れるかもしれないのにそんな余裕ないよ」
『つ、潰れるう!?』
ユーリの放った一撃に、クズの驚愕の声が響く。
「そうだよ。アンタ達親子は、お母様を怒らせたんだ」
『ちょ!? 待っ』
――ブツ、ツー、ツー。
クズが何か言おうとしたが、俺は途中で通話終了ボタンをタップした。
これ以上聞いてもイラっとするだけだし。
「さて、これで」
「うん! 一件落着、だね!」
俺とユーリは、ハイタッチをして微笑み合った。
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次回はいよいよ最終回!
明日の夜更新予定です!
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