久坂大和は中岡悠里を家に招待する。
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「あ、お兄! 私だけ先に帰らせて一体……って」
「し、失礼します……」
緊張した面持ちで挨拶する中岡を見ながら、文香は指差しながら口をパクパクさせた。
「お、お兄……お兄が、三次元の女の子を……」
「あ、えーと……同じクラスの“中岡”。で、コッチは俺の妹で“文香”」
俺が二人にそれぞれ紹介すると……文香よ、なんで俺を半目で睨むんだ?
「お兄……ちょっとは遠慮したらどうなの?」
遠慮? 何言ってるんだコイツ?
首を傾げる俺を見かねたのか、文香はチョンチョン、と指差す。
俺は視線でその先を追っていくと……!?
「ああああああああ!?」
「へ? へ? ……ふあああああああ!?」
突然の俺の叫び声にオロオロしたかと思うと、中岡もソレに気づき、一緒に叫んだ。
や、だって、まだ中岡と手つなぎ状態のままだったんだもん。
そんなの、つい叫んじゃうよな? な!
と、とにかく! その繋いだ手を……って、離れねえええええ!
「お、おい中岡!?」
「へ? へ? だ、だって手が……」
「『手が』じゃねーよ! 離せって言ってんの!」
「あ、ふああああああ!? う、うん!」
そう言うと、やっと中岡が俺の手を離した。
はあ……ちょっと焦った。
で? なんで中岡はそんな名残惜しそうな顔してんだ?
「はあ……で? 中岡さん、でしたっけ?」
文香は溜息を吐くと、急に真剣な表情で中岡を見据えた。
「あ、う、うん……その、久坂……くんのクラスメイトで、“中岡悠里”、です……」
逆に中岡の奴は緊張した面持ちで、少し上目遣いで文香を見やる。
「それで? お兄とはどういった関係で?」
「オイオイ文香、クラスメイトだって言っ「お兄は黙ってて」……はい」
文香にすごまれ、俺はすごすごと引き下がった。
何だよ、普段はお調子者のくせに、たまーにこうやって威圧してくるんだよなあ……お兄ちゃんって一体……。
「あ、ええと……久坂、くんが言った通り、私はクラスメイトで、その……」
そう言うと、中岡は俺をチラリ、と見る。
うん、俺のフォローは期待するな。つか、今言った以上のことはないだろーが。
「ふーん……なんとなく分かったかなー」
文香は頬に手を当て、少し首を傾げる。
そして。
「中岡さん、今日の晩ご飯はクリームシチューです」
「「は?」」
なんだなんだ? 急に家の晩メシ紹介してどうしようってんだ?
お兄ちゃん、ちょっと恥ずかしいぞ?
「ということで、せっかくなので中岡さんも食べていってください」
「「はあああああああ!?」」
や、ホント、何言ってんだよ!?
「おい文香! 急に何を「お兄は黙ってて!」……はい」
くそう、俺はお兄ちゃんなんだぞ!? もっと敬え!
オマケに、晩メシ作るのは俺なんだからな! なんでお前が偉そうに言うんだよ!
……って、言えたらいいのになあ。
「え、ええと、でも……」
困った表情でもじもじする中岡に文香がスッと近づくと、耳元で何かを呟いた。
すると。
「う、うん! ご馳走になります!」
「よし!」
「なぜ!?」
なんだよその掌返しは!?
文香の奴、中岡に一体何言ったんだよ!?
「じゃ、晩ご飯の準備、二人でよろしくねー!」
「へ?」
二人で? 晩メシの準備を?
俺が? コイツと?
俺は呆けながら俺と中岡を交互に指差していると。
「く、久坂! 私、頑張るから!」
中岡は胸の前で小さく拳を握りながら、フンス、と意気込んでいる。
や、元々可愛いからそのしぐさ、かなり俺のツボではあるけれども。刺さったけども。
「なんでこうなった……」
俺は思わず、がっくりとうなだれた。
◇
「んじゃ……カバンはとりあえず俺の部屋に」
「ふあ!?」
なんだよ『ふあ!?』って……こんな可愛い声出す奴だったっけ?
「別になんもねーから、気にしなくていーぞ」
「え、ああああ、もも、もちろん、気になんてしてないよ!?」
「めちゃくちゃキョドってるじゃねーか……」
「ああ、当たり前だよ! お、男の子の部屋に入るなんて……!」
アレ? そーなの?
「や、だけど芹沢の部屋に入ったりし「そんなのする訳ないだろ!」……あ、はい」
ウーン、そこまで全否定しなくてもいいと思うんだけどなあ……。
まあいいや。
俺は自分の部屋へと中岡を案内すると。
「ふああああ……」
中岡は瞳をキラキラさせながら俺の部屋を見る。何で!?
「べ、別にいたって普通の部屋だろ?」
「へ? あ、う、うん……思ったより綺麗に片づいてるし……」
「まーな」
そう言って、俺は無造作にカバンを放り投げる。
「中岡も適当に置いといてくれ」
「う、うん……それにしても……」
おずおずとカバンを置くと、中岡はまた部屋を見回した。
「てっきり、ゲームの女の子のポスターとかフィギュアとか飾ってると思ってた……んだけど……」
「ん? ああ、俺は奥さん達とはゲームの世界で逢うことにしてるからな」
だって、うちの奥さん達は異世界にいるんだからなあ。
ん? 中岡、なんでジト目で見てんの?
「はあ……まあ、思ってたよりは……(ボソッ)」
「ん?」
「あ、ああああ、何でもない!」
「そう? んじゃ、キッチンに案内するけど……メシはいつも俺一人で作ってんだから、お前は無理して手伝わ「い、いや! 私も手伝うから!」……お、おう……」
中岡の奴、なんでこんなに気合い入ってるんだ!?
まあ、手伝ってもらえるなら俺もありがたいけど。
「分かった。よろしく頼む」
「うん!」
俺達は部屋を出てキッチンに……おっと、大事なこと忘れてた。
「悪い中岡、その先がキッチンだから、先行っといて」
「ええ!? だ、だけど……」
「大丈夫大丈夫、家ん中、俺と文香しかいねーから」
そう言って手をひらひらさせながら、俺は畳のある部屋に入ってふすまを閉めると。
「母さん、ただいま」
お読みいただき、ありがとうございました!
一話多めに書けたので、ゲリラ的に投稿しました!
次話は本日の夜投稿予定です!
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