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久坂大和は中岡悠里に待ち伏せされる。

ご覧いただき、ありがとうございます!

「ああ……俺の、クラスメイトだ」


 俺は沖田晴斗……いや、芹沢が消えた路地の角を見つめながら、文香に静かにそう答えた。


「クラスメイト!? お兄それマジ!?」

「あ、ああ……多分……」


 興奮気味に尋ねる文香に、俺は曖昧に返事するしかできなかった。


 や、だって、まさか陰キャで今日もクラスの女子に笑われてるような奴が売れっ子な若手俳優だなんて想像つかねーよ!?


 むしろ、俺の頭の中が絶賛混乱中だっての!


「うわあー……ねえねえお兄! 晴斗キュンのサイン貰ってきてよ!」


 文香は瞳をキラキラさせながら、俺の肩をバシバシと叩く。

 だから、さっきから痛いっての!


「やだよ! なんでだよ!」

「えーお兄、クラスメイトなんでしょ?」

「そうだけど! そうなんだけど!」


 クラスメイトだからって、仲が良いわけじゃないからな!?


「とにかく! アイツはああやって正体を隠してるっぽいから、下手に『お前、ひょっとして沖田晴斗?』なんて聞いてみろ! 気まずくてしゃーねーよ!」


 うん、嘘です。

 ホントは、面倒臭そうだから関わり合いになりたくないだけです。


「つーわけだから、アイツのことはなかったことにしとけ」

「えー……」


 文香は納得がいかないとばかりに口を尖らせるが、俺はもう終わったとばかりにスタスタと家に向かって歩き始めた。


「もー! ちょっと待ってよ!」


 それを見た文香も、慌てて俺の後を追いかけ、二人で家路に着いた。



「それで……なんでアイツが俺の家の前にいるんだ?」


 自宅のマンションに帰ってきた俺と文香だったが、なぜかマンションの玄関で、壁にもたれている中岡がいた……。


「? お兄、中に入らないの?」

「ああいや……お前、先に帰っててくれ」

「う、うん……」


 そう言うと、文香は怪訝な表情を浮かべながらマンションの中へと入って行った。


 さて。


「中岡……俺の家の前で何してんだ?」

「あ……べ、別に!? たまたま通りかかっただけだし!?」

「嘘吐け!」


 中岡は顔を背けて鳴らない口笛をヒューヒューと吹いた。


「はあ……で、どうやって俺の家の住所を調べたんだ?」

「ハ、ハア!? だから、私はたまたま偶然……」


 や、“たまたま”も“偶然”も意味一緒だろーが。


「分かった! どうせあの風紀委員長が勝手に生徒の個人情報を持ち出しやがったな!」

「な!? 品行方正な木戸先輩がそんなことする訳ないでしょ! たまたま先生の机の上にあった住所録から……!」

「……覗き見たのか?」

「う……」


 俺がキッ、と睨みながら中岡を問い質すと、中岡は言葉を詰まらせて後ずさりをした。


「はあ……中岡、さすがにそれはやっちゃいけないだろ……」


 俺は目を瞑りながらかぶりを振る、


 別にクラスメイトに自宅を知られたからって困る訳でもないけど、それでも、最低限のルールっつーか、そういうのはあるだろ……。


「……で、そんな真似してまで、一体俺に何の用なんだ?」


 俺は中岡に対し、少し侮蔑を込めた視線を送ると。


「ごめん……確かにキミの言う通り、これはしちゃいけないことだった……だけど……だけど……」


 そう言うと、なぜか中岡はぽろぽろと涙を零し始めた。


「オ、オイ!?」


 俺はあの(・・)中岡が泣き出したことに驚いてしまい、思わず彼女に駆け寄るけど……ど、どうすりゃいいんだ!?

 ふ、文香は……って、あああああ! 俺が先に中に入らせたんだったあああ!?


「と、とにかく! ここにいてもアレだから、とりあえず俺ん家こい!」

「あ……」


 俺はいたたまれなくなり、無意識に中岡の手をつかんでマンションの中に引き入れた。


 え、ええと、暗証番号……あああ、焦って上手く入力できねー!


 お、落ち着け俺……『0・5・7・3』……よし! 開いた!


「コ、コッチだ!」

「う、うん……」


 俺は急いでエレベーターの前に行き、上のボタンを押す。


 ああもう……まだ降りてこねーのかよ……!


 ——チーン。


「さ、さあ乗るぞ……って、わああ!?」

「キャッ!?」


 い、急いで乗ろうとしたせいで(つまづ)いて……って、危なっ!?


 俺が手を引いていたせいで、同じくよろけた中岡を、俺は慌てて抱き留めた。


「だ、大丈夫か!?」

「あ、う、うん……」

「ホ、ホントか!? その割には少し顔が赤く「だ、大丈夫だから!」……お、おう……」


 心配して声を掛けたのに……。


 ま、まあ、俺のせいで躓いたわけだから、何も言えんのだけど。


「あ、そ、そうだ! ボタン押さねーと!」


 俺は“8”の数字を押し、続けて締めるボタンを押すと、扉が閉まって上へと昇っていく。


「…………………………」

「…………………………」


 き、気まずい……。


「「あ、あの!」」


 チクショオオオオオ! 被ったあああああ!


 見ろよ! 中岡も気まずくて顔逸らしちまったじゃねーか!


 ああ……こんなことなら、文香の奴を先に帰すんじゃなかった……。


 ——チーン。


 つ、着いた……!


「ホホ、ホラ、ここが俺の家だ!」

「うう、うん……!」


 俺は焦りながらドアノブに手を掛け、扉を開くと。


「あ、お兄! 私だけ先に帰らせて一体……って」

「し、失礼します……」


 緊張した面持ちで挨拶する中岡を見ながら、文香は指差しながら口をパクパクさせた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は明日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[気になる点] 中岡ちゃん、そんなに思いつめて… 大和、なんとか出来るのか? [一言] それでも文香なら… 文香らきっと何とかしてくれる…!!
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