久坂大和と中岡悠里は初デートを楽しむ。③
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「ふああああ……面白かったねー!」
ユーリが満面の笑み、というか、少し瞳に涙を溜めていた。
昼メシを食った後、俺のプラン通り映画を提案したら、ユーリが賛成してくれたので、そのまま映画を見に行ったんだけど……。
や、まさか戦隊ヒロイン飯テロラブコメをチョイスするとは思わなかった。
で、それを観終わって映画館を出てきた訳なんだけど……。
「え、ええと……ユーリってニチアサ系好きなの?」
「うん! なんというか、こう……燃えるよね!」
そう言うと、ユーリが空手の正拳突きを繰り出すポーズをした。
「それに、この映画は前から観たかったから、すごく嬉しい!」
「お、おう、それは良かった。ま、俺としては、あのヒロインの彼氏が作るメシに興味があったかな」
「確かに! 全部美味しそうだったよね!」
うんうん、今後のレシピの参考にもなったしな。
「そうだ、ユーリはあの中でどの料理が食いたくなった?」
「え? うーん、そうだね……マカロニグラタンも美味しそうだったし、肉じゃがも……悩むなあ……」
ユーリは映画に出てきた料理を思い出しながら、首を捻ると。
「やっぱり、一番最初に出てきた餃子かな! あれ、反則だよね!」
そう言うと、ユーリは瞳をキラキラさせた。
「よし、じゃあ今日の晩メシは餃子にするか」
「わーい! やったー!」
俺の提案を聞いたユーリが、両手を上げて小躍りする。
うん、やっぱりユーリは可愛いなあ……。
「んじゃ、そろそろ指輪を取りに行って、その後スーパーに寄って帰るか」
「うん!」
デートの締めがスーパーっていう、なんともしまらないオチではあるが……ま、それも俺達らしい、かな。
◇
「やあ、待ってたよ」
俺達が店に入ると、店長さんが笑顔で出迎えてくれた。
「店長さん、それで……」
「うん。もちろん仕上がってるよ」
そう言って、店長はケースに入った指輪を俺達に見せてくれた。
「早速試してもらっていいかい?」
「はい」
ユーリは指輪を受け取ると、自分の薬指にはめる。
「はい! ちょうど良いです!」
「はは、なら良かったよ。後でキツかったり緩いと感じたら、いつでも持っておいで。すぐに直してあげるから」
「はい!」
ユーリは元気よく返事すると、慈しむように左手薬指にはまっている指輪を撫でる。
「それじゃ店長さん、料金を「ああ、お代は結構だよ」」
サイズ直しの代金を支払おうと財布を出そうとしたら、店長さんに止められた。
「だ、だけど……」
「いやいや、今回は大和くんがその指輪を渡す女の子を連れてきてくれたんだ。これは、私からのお祝いと思って、ね?」
そう言うと、店長さんは軽くウインクした。
「あ……はい、それじゃ、今回はお言葉に甘えます」
「うんうん。その代わり、大和くんが悠里ちゃんに婚約指輪をプレゼントする時は、ぜひうちの店を利用してね!」
「は、はい!」
「ふああああ!?」
店長さんの言葉に、俺が勢いよく返事をすると、ユーリが顔を真っ赤にして驚いた。
ま、まあ……これってある意味プロポーズみたいなモン……かも。
「「そ、それじゃ、失礼します!」」
「うん、またいつでも来てね」
俺達は店長さんに見送られ、店を出た。
すると。
「ね、ねえヤマト……そそ、その、さっきの……」
さっきのって……あー、婚約指輪な……。
「そ、その……俺はまだ高校生だし、文香が一人前になるまで面倒見なきゃいけないってのはあるんだけど、その……」
俺はそう言いながら頭を掻き、チラリ、とユーリを見る。
ユーリは顔を赤らめ、何かを期待するような、何かを待っているような、そんな表情を浮かべていた。
「お、俺は……俺には、これからもずっと、ユーリだけ、だから……だから、その……俺は、これから先もずっと、ユーリと一緒にいたい」
「っ! う、うん……私も、だよお……」
俺の想いを聞いたユーリは口元を押さえ、ぽろぽろと涙を零す。
そして。
「ヤマト……嬉しい、嬉しい……よお……」
「ユーリ……」
俺の胸に飛び込んで顔をうずめるユーリを、俺はそっと抱き締めた。
「ヤマト……」
ユーリが涙を零しながら、胸の中から俺の顔を覗き込む。
俺は……。
「あ……ん……ちゅ……」
俺は、ユーリのその唇に、そっとキスをした。
「ん……ぷは……ヤマト……」
「ユーリ……大好きだ……」
「私も……ヤマトが大好き……」
唇を離した後も、俺とユーリはじっと見つめ合う。
その時。
「き、貴様あああああ! 僕の悠里から離れろおおおおお!」
……そんな俺達の気分を台無しにするかのように、怒りの形相をしながら芹沢悠馬が目の前に現れた。
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次話は明日の夜更新予定です!
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