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久坂大和は今話題の若手俳優の正体を知る。

ご覧いただき、ありがとうございます!

「いやー! どうでしたか沖田さん、ここのラーメンは!」

「あ、ハイ。スープが濃厚で、すごく美味しかったです!」


 人だかりの輪の中心で、今話題の若手俳優“沖田晴斗”が女子アナらしき人にマイクを向けられ、さわやかにラーメンの感想を答える。


 よく見ると……周りにいるの、ほぼ女の子ばっかじゃねーか!?


「それで、沖田さんはラーメンってよく食べたりするんですか?」

「そうですねー、うちの家族って全員ラーメンが好きで、みんなで食べに行ったりしますね」

「へえー、そうなんですねー!」


 などと、まさにグルメバラエティ的なノリで淡々と進んでいき。


「はい! カット! いやー良かったよ!」

「ありがとうございます」


 プロデューサーらしき人が撮影終了の合図をし、沖田晴斗に駆け寄ってその肩を叩くと、沖田晴斗は照れながら頭を掻いた。


 すると、周りの女性陣は『キャー!』だの『尊い……』だのを連呼しながら、沖田晴斗をウットリとした表情で見つめていた……いや、これは凝視しているというほうが正しいかもしれない……。


 そして、残念なことに。


「……何してんだ、“文香(ふみか)”?」


 俺の妹が、瞳をキラキラさせながら沖田晴斗に全力で手を振っていた。


「キャー! 晴斗くーん! ……って、お兄!?」

「おう。文香たんのお兄ちゃん、久坂大和だ」

「今忙しいから!」

「あ、う、うん……」


 俺は軽く手を挙げながら近寄るが思いっきり邪魔者扱いされてしまったので、そっと離れた……泣くぞ!?


 撤収作業も終わり、沖田晴斗がスタッフ達と共にロケバンに乗り込むと。


「みんな! 今日は僕を見てくれてありがとね!」


 窓から手を振りながらさわやかな笑顔でそう叫び、商店街を去っていった。


 当然。


「「「「「「「「「「キャ————————————!!!!!」」」」」」」」」」


 商店街中に、女の子達の絶叫がこだました。

 もちろん、うちの妹も含まれている。


 そして、ロケバンが視界から見えなくなると、女の子達は蜘蛛の子を散らすようにその場から立ち去っていった。


「……おーい」

「はあ……晴斗キュン、最高に尊い……」


 同じく現場から立ち去ろうとする妹に声を掛けるが、文香は未だに別の世界にいるようだ。


「文香ー、今日の晩メシはクリームシチューだぞー」

「ああ……晴斗キューン……って、クリームシチュー! やったー!」


 クリームシチューが、沖田晴斗に勝利した瞬間だった。


「おう。つーわけで、お前も買い物に付き合え」

「えー……じゃあさ、家計でおやつ買ってもいい?」

「毎月小遣い渡してるだろうが!」


 全く……無駄遣いは良くないのだ。


「ちぇー、お兄のケチ!」

「よし、来月から文香の小遣いは五十パーカットな」

「すいませんでした!」


 文香は直立不動から直角に腰を曲げて頭を下げた。


 うむうむ、よろしい。

 

「んじゃ、いつものスーパー行くぞ」

「はーい」


 俺達は行きつけのスーパーでクリームシチューの食材……玉ねぎ、ジャガイモ、ニンジン、ブロッコリー、鶏もも肉に……よし、こんなものかな。


 材料を一揃いカゴに入れると、俺達はそのままレジへと向かう。


 レジのおばさんが手慣れた手つきでバーコードを読み取って……。


「あ、スイマセン、そのお菓子はいらないです」

「分かりましたー」


 文香め、しれっとカゴに忍ばせてやがった……油断ならねー。


 会計も終わり、カバンから買い物袋を取り出すと、買ったものを詰めて、と。


「よし、じゃあ帰るぞ」

「はーい」


 スーパーの自動ドアをくぐり、自宅マンションに向かって商店街の裏通りを抜けようと……って。


「……文香、あれ……」


 俺は路地の陰に隠れながら、さっき見たロケバンに指を差した。


「あ! あれって……モガ!?」

「シッ!」


 俺は叫びそうになった文香の口元を押さえた。


「シー、静かに」


 俺も、なんでこんなことをしたのか分からない。


 だけど、わざわざ商店街から離れたロケバンが裏通りに横付けしてるって、明らかにおかしいよなあ……。


 などと考えていると、ロケバンのドアを開けて沖田晴斗が降りてきた。


 そしてスタッフの人に軽くお辞儀をして……コッチに来る!?


「(チョ!? 文香、もっと奥に!)」

「(う、うん!)」


 俺達は物陰のさらに奥に身を潜めながら、沖田晴斗の様子を窺う。


 すると。


「(オイオイオイ!?)」


 沖田晴斗はキョロキョロと辺りを確認したかと思うと、後ろへと流していたその髪をあえてボサボサにし、カバンから眼鏡を取り出して掛けた。


「ふう……誰にも見られてない、よね……?」

「「っ!?」」


 その呟きに、俺も文香も思わず息を飲む。


 だけど、沖田晴斗は俺達の存在には気づかず、そのまま周りを確認しながら足早にその場を去った。


「……行ったか?」


 その後ろ姿が曲がり角で消えたのを確認すると、俺達は物陰から出て胸を撫で下ろす。


「わーわー! アレってひょっとして、ドラマの役作りか何かかな!」


 文香は興奮しながら俺の肩をバシバシと叩く。


 だけど。


「アイツ……芹沢だよ……」

「芹沢?」


 ポツリ、と呟いた俺の言葉を拾い、文香が尋ねる。


「ああ……俺の、クラスメイトだ」

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は本日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[一言] 彼は尋ねるか、Bingがおそらくこれを読むつもりはないのでしょうか
[一言] 芹沢!なんて迂闊な! さあ、コレをネタにお小遣い稼ぎですね? えっ…?違いますか…。
[良い点] ・「ああ……晴斗キューン……って、クリームシチュー! やったー!」 素直に笑いました...!! [一言] 充電期間を経ての新作!お待ちしてました! まだ始まったばかりですが...凄い気にな…
2020/11/04 08:27 退会済み
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