久坂大和と中岡悠里は藤堂エルザに謝罪される。
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——キーンコーン。
四時間目終了を告げるチャイムが鳴ると。
「ヤマト! ご飯行こ!」
ユーリが今日も元気に駆け寄ってきた。
「おう、そうだな……んじゃ、いつも通り風紀委員会室に「ちょっといい?」」
カバンの中から弁当箱を取り出し、席を立とうとした俺に、風紀委員の一人……確か、江藤さんだっけ? が声を掛けてきた。
「ん? 小春、どうしたの?」
「あ、うん……私っていうより、その……」
ユーリが尋ねると、江藤さんが遠慮するというか、申し訳なさそうな表情でチラリ、と後ろを振り向く。
そこには……神妙な顔をした藤堂エルザがいた。
「え、ええと……藤堂さんが二人に謝りたいって……」
「俺達に?」
俺は思わず自分とユーリをそれぞれ指差しながら、藤堂エルザを見やった。
「あ……その……」
藤堂エルザは気まずそうな表情で俯き、胸に当てているをの手をキュ、と握る。
そして、意を決したかのようにをの顔を上げた。
「あ、あの! 本当にすいませんでした!」
「うお!?」
「ふあ!?」
藤堂エルザがあまりにも勢いよく深々と頭を下げるもんだから、俺とユーリは思わず仰け反った。
「あ、あの……藤堂、さん……?」
俺は恐る恐る藤堂エルザに声を掛けると。
「わ、私、ちゃんと話も聞かないで勝手に想像して、お二人にひどいことを言ってしまいました! その、謝罪させてください!」
「うおお!?」
ダ、ダメだ……俺には荷が重すぎる……。
すると。
「……藤堂さん、顔を上げてよ」
「っ!」
ユーリが低い声で藤堂エルザにそう促すと、彼女はビクッとしながらも、おずおずとその顔を上げる。
「ねえ、急にどうして謝ろうって思ったの?」
有無を言わせないとばかりに、ユーリは鋭い視線を向けながら尋ねた。
「そ、その……江藤さんに色々とお話しを伺って、中岡さんが、本当は彼に何かをしたというより、むしろその……彼のせいで迷惑を受けていた、と……」
藤堂エルザは申し訳なさと、その事実を知ったが故の芹沢への失望で、意気消沈しながら訥々とその理由を説明した。
「えーと、小春?」
「え、いや、ホラ! 私だって悠里が誤解されてるの嫌だし、その……ねえ?」
江藤さんは気まずそうに視線をそらしながら、おずおずと話した。
「はあ……分かった。まあ、藤堂さんに悪気があった訳でもなさそうだし、私は別にいいよ。ヤマトは?」
「へ? 俺?」
突然ユーリに話を振られ、思わず呆けた声を出してしまった。
「え、ええと、俺も別に気にしてないし……」
そう言うと。
「あ、ありがとうございます!」
「うおおお!?」
「ふあああ!?」
藤堂エルザがまたも勢いよく頭を下げるもんだから、俺とユーリもさらに身体を仰け反った。
そして……俺は気づいてしまった。
藤堂エルザが謝ったことによって、クラスメイト達の視線が変化したことに。
中でも特に男子がヤバイ。
昨日までは単に藤堂エルザが俺達に対して敵意を見せたことに対する迎合だったものが、今は“嫉妬”というものに変化していた。
それこそ、血の涙でも流しそうな勢いで。
コレ、ますますヘイトを集める結果になったんじゃ……い、いやいや、何も考えるまい。
それより。
「ま、まあ、それじゃこれで話は終わったということで……」
俺は一刻も早くその場から立ち去りたくて、ユーリの手を繋いでそそくさとその場を去ろうとした……んだけど。
「あ! ま、待って下さい!」
なぜか藤堂エルザに呼び止められてしまったんだけど!?
「え、ええと……何?」
俺は恐る恐る尋ねると、藤堂エルザが真剣な表情で俺達を見つめ。
「そ、その! も、もしよろしければ、お昼をご一緒させていただけませんでしょうか!」
「「は、はいいいい!?」」
彼女から放たれた言葉に、俺達は思わず叫んでしまった。
◇
「……で、結局一緒にメシ食う羽目になっちまった……」
俺はうなだれながら、風紀委員会室に向かってトボトボと歩いていた。
「あ、あはは……まあ、今日くらいはいいんじゃないかな……」
ユーリは頬を引きつらせながら、乾いた笑みを浮かべる。
「うふふ、お友達とお昼をご一緒するなんて、楽しみです!」
片や、俺達とは打って変わって超ゴキゲンの藤堂エルザ。
それこそ、人目もはばからずにスキップしてしまいそうな勢いだ。
つか、いつから俺達はその“お友達”とやらになったんだよ。
「え、ええと……ゴ、ゴメンね?」
そして、申し訳なさそうにそっとユーリに謝る江藤さん。
「ま、まあ、今回は仕方ない、かなあ……」
ユーリはそうやって受け入れている的な態度を見せてるけど……ユーリさんや、拳が震えておりますぞ。
もちろん、それは江藤さんにもバレバレで、彼女は「ヒイイ」と軽く悲鳴を上げていた。
はあ……今日の昼休み、収拾つくのかなあ……。
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次話は明日の夜更新予定です!
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