久坂大和と中岡悠里は風紀委員達から質問攻めに遭う。
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「うむ。そこで我々風紀委員会は、二人が校内にいる間、授業中を除く全ての時間に置いて風紀委員二名が交代で二人の傍に控えることにした。まあ、要は君達を守るボディーガードとでも思ってくれ」
「「っ!?」」
木戸先輩から放たれた言葉に、芹沢と藤堂エルザが息を飲む。
や、でも風紀委員会の判断としては妥当だと思う。
この学校で生徒会よりも強い権力……というか、木戸先輩に逆らったらどうなるか理解しているうちの生徒達なら、風紀委員会がそうやってボディーガードという名の監視をすれば、生徒達も手は出せないし、何より二人が好き勝手できないように行動を制限することもできる。
でも。
「な、何でですか! そのようなものは私達には不要です!」
「そ、そうです! 僕達は決して学校に迷惑を掛けるような……!」
当然納得できない二人は、木戸先輩に向かって抗議する。
つか、藤堂エルザはともかく、芹沢は木戸先輩のこと知ってるだろうに。
そんなクレームを入れたら。
「ふむ。我々風紀委員会の提案を飲めない、というのだな?」
「と、当然です! こんなの横暴じゃないですか!」
藤堂エルザが詰め寄るが、木戸先輩は意に介さず、ただ静かに目を瞑った。
そして。
「ふざけるな!」
「ひっ!?」
腹の底から響くほど冷たい声を発し、木戸先輩が藤堂エルザを睨みつけると、あまりの迫力に藤堂エルザが慄いた。
「いいか、お前達二人が原因で、既にここにいる久坂大和がいわれのない暴力を受けたのだ。迷惑を掛けていない? 横暴だ? 馬鹿も休み休み言え!」
「「…………………………」」
木戸先輩の反論できない程の恫喝に、ただ二人は押し黙る。
「さらに! お前達も芸能人なら、こうなることは予想できたはずだ! にもかかわらず、何ら対策を講じていない! これは怠慢以外の何者でもない! ……ハッキリ言おう。この聖稜高校にとって、君達二人にはいて欲しくない」
「な!? いくら風紀委員長とはいえ、ただの一生徒でしかないあなたに、どうしてそこまで言われ……ヒッ!?」
木戸先輩の辛辣な言葉に、さっきの戦慄をすっかり忘れた藤堂エルザ。
だけど、先輩の一睨みでそれを思い出したようだ。
「よく考えろ。今回の提案は、風紀委員会として最大限の譲歩をした結果なのだ。これを受け入れられないのなら、この学校の理事長に進言し、君達二人の転校を薦めても構わんぞ?」
「あ……そ、それは……」
木戸先輩の言葉に、芹沢は狼狽える。
まあそうだろうな。そんなことになったら、ご執心のユーリの傍を離れちまうことになるからな。
「で……どうするのだ! 風紀委員会の提案を受け入れるのか! 拒否するのか!」
木戸先輩が、これが最後通告だとばかりに強い言葉を二人にぶつけると。
「……風紀委員会の提案通りにします……」
「っ!? 悠馬さん!?」
うん、芹沢の奴が折れた。
こうなると、あとは藤堂エルザだけど……まあ、芹沢が受け入れたんだ。彼女も受け入れることになるんだろう。
「話は以上だ。早速明日の朝から風紀委員会が交代で就くからそのつもりで」
「……はい」
芹沢と藤堂エルザは、俯いたまま風紀委員会室を出て行く。
まあ、芹沢が席を立つ際に俺を睨みつけていたが、無視だ無視。
「ええと……それで、俺は……」
二人の背中が視界から消えて軽く息を吐く先輩に、俺はおずおずと尋ねると。
「ああ……待たせてしまってすまないな。実は、こっちが本題ではあるんだが……」
そう言うと、先輩には珍しく、なぜか申し訳なさそうに視線を逸らした。
ん? 一体どうしたんだろう?
俺は先輩の隣に座るユーリに視線を向けると……ユーリは何か起こってもいいように身構えている。
やっぱりユーリの奴、相当警戒してるな。
「ああそうだ、悠里も久坂くんの隣に行くといい」
「え……? は、はあ……」
先輩の意図が読めず、怪訝な表情を浮かべるも、それでも俺を守ろうとするためか、ユーリはその提案に乗って俺の傍にやってきた。
「ヤマト……大丈夫だから」
「はは、別に何も心配してねーよ」
俺はユーリの緊張を解くために、わざとおどけてそう言うと、ユーリが少し頬を緩めた。
「もう……ヤマトは……」
そして、ユーリは俺の隣にチョコンと座った。
すると。
「はいはい! 質問! それで、どちらから告白したの?」
「「……………………へ?」」
俺達は風紀委員の一人から突然放たれた質問に、思わず目を白黒させる。
な、何でいきなりそんなこと聞くの!?
「そりゃーもちろん悠里からでしょ!」
「イヤイヤ、二人の様子を見ると、久坂くんからの線も……!」
「ていうか、チューしたの? チュー!」
やいのやいのと黄色い声を上げながら質問攻めをする風紀委員達……。
俺はジロリ、と先輩を見ると。
「す、すまんな……みんなが二人の馴れ初めを聞きたがってな……」
そう言って苦笑しながら肩を竦めた。
えーと……まあつまり、俺はネタの提供元として呼ばれた、ってことですか……。
「あ、あはは……な、なんだかねー……」
「そ、そうだな……」
俺とユーリはただ苦笑するしかなく、それからしばらくの間、風紀委員達から根掘り葉掘りと質問される羽目になった。
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