表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/57

久坂大和はウザい二人を論破する。

ご覧いただき、ありがとうございます!

「おい……斎藤どけ」

「む……」


 俺はグイ、と斎藤を押し退け、ツカツカとユーリの元へ向かった。


 横を通り過ぎる時に見えた、斎藤のしかめっ面が気になるが、今はそれどころじゃない。


「よう、面白そうな話してるな」

「ヤマト!」


 キョトンとしていたユーリだったが、俺が彼女の隣に来ると、嬉しそうな表情を浮かべた。

 うーん、やっぱり俺の彼女、超カワイイぞ。


「何ですかあなたは。部外者は「イヤイヤ、そっちこそ部外者じゃないの?」……は?」


 俺が間髪入れずに指摘すると、藤堂エルザが顔をしかめる。

 つか、アイドルなのにその表情はどうなの?


「だーかーらー、部外者だっつーんなら、藤堂さんも部外者だろ?」

「な! 私は部外者なんかじゃありません! 私は「私は? 何なの? ひょっとして、芹沢の彼女とか?」」


 そう指摘すると、藤堂エルザが俺を忌々し気に見つめた。イヤ、何なの?


「……ねえ、ヤマトにそんな視線向けるの、やめてくれないかな」

「っ!?」


 ユーリの恐ろしく低い声に、藤堂エルザが一瞬息を飲んだ。

 や、俺も思わず腹の底から震えそうになったのは内緒だ。


「……まあいいや。で? さっきユーリのこと“許さない”っつったけど、聞いてりゃそんなの、全部芹沢の自業自得だよな?」

「ハア!? なんでそうなるんですか! そんなの、中岡さんのせいに決まってるじゃないですか!」


 ホント、何なのコイツ?

 アイドルっつーのは、自分中心に世界が動いてるとでも思ってる訳?


 全く……一つ一つ説明しねーと分かんねーのか……。


「いいか、そもそも芹沢がクラスメイトに変な目で見られてたのなんて、“沖田晴斗”であることを隠して、陰キャボッチを演じてたのが原因だろ? それが嫌なら、最初から言えばよかったんじゃねーか」

「な!? あなた、何を考えているんですか! そんなことできる訳ないじゃないですか!」

「……そんなの、影響を考えたら、できないよ……」


 俺の指摘に、藤堂エルザがふざけるなとばかりに噛みつき、芹沢はなぜか憂いを帯びた表情でかぶりを振る。


 だから俺は、そんな二人にこう告げよう。


「イヤイヤ、オマエ等何言ってんの? 現にオマエ、今日になって“沖田晴斗”って正体明かしてんじゃん」

「あ、ホントだねー」


 俺の言葉に、ユーリは呑気にウンウン、と頷く。


「ま、でも、これからは、“陰キャ”だの“ボッチ”だの言われなくて済むじゃん、良かったな」

「ねー」

「じゃ、これで話は終わりってことでいいよな?」


 俺は二人に向かって手をヒラヒラさせ、ご退場願おうとしたんだけど。


「ふ、ふざけないでください! それじゃ、悠馬さんが受け続けてきた今までの苦痛はどうするんですか!」

「イヤ、だから自業自得だって言ったじゃん。それに、苦痛だ苦痛だっつーんなら、“陰キャ”だの“ボッチ”だの言った奴に直接文句言えよ」


 そう言うと、俺はクラスメイト達に視線を送ると……うむ、全員綺麗に目を伏せやがった。


「つーことで、今度こそ話は終わりでいいよな?」

「「…………………………」」


 俺が二人に視線を戻すと、藤堂エルザは悔しそうに唇を噛み、芹沢は……うん、なんか呆然としてる。ま、いいか。


「だったら、さっさと向こう行けよ。俺もユーリも、二人に用はないからさ」


 俺はシッシッ、と手で払う仕草をする。


「……久坂君、一つ聞きたい」

「え? 俺は話したいことなんかないんだけど?」


 どうせ、コイツが聞きたいことなんて分かってる。


 俺とユーリがどんな関係なのか、だろ?


「君は「知らね。自分で考えろよ。ユーリ、気分悪いから外の空気吸いに行こうぜ」」

「へ? あ、う、うん」


 俺は今度こそおしまいとばかりに、ユーリの手を引きながら教室を出た。


 俺を射殺すような視線を送る、芹沢を無視して。


 ◇


「ふう……いや、余計なまねして悪かった!」


 廊下に出るなり俺は軽く溜息を吐くと、ユーリに深々と頭を下げた。


「え!? イヤイヤ、そんな謝ったりしないでよ! だって……ヤマトは私のこと心配してくれたんでしょ?」

「……心配っつーか、ユーリを悪く言われて、腹が立って……」


 俺はユーリに申し訳なさ過ぎて、顔を上げられない。

 ハッキリ言ってこんなの、ユーリの気持ちも無視して一方的に俺の感情だけで動いて……。


 すると。


「も、もう! ヤマト、顔を上げてくれないといい加減怒るよ!」

「ええ!? だ、だけど……」

「だけどじゃない!」


 謝ってるのに、むしろ怒られた……。


 仕方なく、俺はおずおずと顔を上げると……なぜかユーリは顔を上気させ、瞳が潤んでいた。


「ヤマト……私ね、あの二人に絡まれた時、キミが真っ先に飛び出してくれて、ああやって私のために怒ってくれたこと、すごく嬉しかった」

「あ、お、おう……」

「しかも、知ってる? あの時、二人のファンのクラスメイト達が、全員ヤマトのこと睨んでたよ?」

「へ? そ、そうなの?」


 うーん、クラスメイト達を敵に回したか。

 ま、関係ないけど。


「なのに、そんなのお構いなしに私の擁護なんかして……こんなの、もっともっとキミのこと、好きになっちゃうよ……」

「う、うん……」


 ああモウ! 『もっともっと好きになっちゃう』だって!? そんなの、むしろ俺のほうがだよ!


 ——キーンコーン。


「あ、もうHRの時間か」

「そうだね。じゃ、教室に戻ろ?」


 そう言うと、さっきとは反対に、今度は俺がユーリに手を引かれて教室へと戻った。


 お互い、満面の笑みを浮かべながら。

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は明日の夜更新予定です!


少しでも面白い! 続きが気になる! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼新作投稿しました! こちらもどうぞよろしくお願いします!▼
【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[良い点] 二人のピエロっぷりと、ヤマトくんの啖呵が面白いです!ざまぁ!w せいぜい芸能人コンビは二人がイチャイチャするための良い噛ませ犬になって欲しいですね!笑
[気になる点] やれやれ…馬鹿な芸能人コンビは何とかならないものですかね?w 芸能クラスでも新設したほうがいいっすね…
[良い点] スッキリ論破最高ですね(≧∇≦)b今回短くて残念ですが(;>_<;)次回も楽しみに待ってます( =^ω^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ