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久坂大和は今話題の若手俳優を目撃する。

ご覧いただき、ありがとうございます!

本日二話目の投稿です!

 ——キーンコーン。


「それで、“御前様”はいつもの案件だったのか?」


 一時間目終了のチャイムが鳴るなり、斎藤の奴が早速俺に絡んできた。


 つか俺に絡んでくる奴多くない? ……つっても、斎藤と中岡の二人だけだけど。


「……おう。毎朝毎朝、よく飽きねーよなー……」


 俺は斎藤の問い掛けに、ぶっきらぼうに答えた。


「だが、あの“御前様”と毎朝風紀委員会室で二人っきりになっているのだ。普通は喜ぶところなのだがな」


 斎藤は腕組みしながらウーン、と唸る。


 や、確かに中岡は可愛いよ?


 黒髪ショートボブの髪型に、同じく黒くて大きな瞳、真一文字に結んだ淡い桜色の唇がトレードマークで、その凛とした可愛さから二年男子の羨望を一身に集めているからな。


 でも。


「お前だって知ってるだろ? アイツが何で“御前様”って呼ばれてるか……」

「まあな」


 そう……それは、高校一年の二学期始まってすぐだった。

 夏休み明けで妙に浮かれた男子生徒が三人、ふざけて中岡に絡んだのが始まりだったなあ……。


 あの時、校舎に入ろうとしていた中岡に、男子生徒の一人がアイツの肩をつかんで呼び止めたら、中岡がソイツの手首を捻って綺麗に投げ飛ばしたんだよなあ。


 で、そん時の中岡の台詞が痛快だった。


『私に触れていい男の人は、私が大好きな人だけだよ』


 そう言って、軽く鼻で笑って校舎の中に入って行った中岡を見て、カッコイイと思っていたのは内緒だ。


 で、そこからついた二つ名が“聖稜の巴御前”。

 誰が言ったんだか知らないけど、勇ましいところがそっくりらしい。


「……全く、これで万が一密室でアイツに触れようモンなら、恐らく俺の命はそこで尽きることになるぞ。身体的にも、社会的にも」

「そうか?」


 『そうか?』だと? そうだよ。


「まあいい。大体お前は、それどころじゃない(・・・・・・・・・)からな」

「よく分かってるじゃねーか」


 そうとも。

 俺には既に四人のメインヒロインと、三人のサブヒロインの育成……いやいや、七人の妻との逢瀬の日々が……! って、んん?


「なんだよ……何か言いたそうな顔だな?」

「別に」


 そう言うと、斎藤は自分の席へと戻っていった。


 何だアイツ……。


 ◇


「ウーン……今日も良く寝たな。さーて、さっさと帰るか」


 放課後になり、俺は帰り支度を始めていると。


「久坂」

「……来やがったか」


 もう! もう! 今日も結局放課後まで絡んできやがって!

 俺は昼休みにまで絡まれて、お腹いっぱいなんだよ!


「ねえ、明日こそはその指輪外してきてよね!」

「だーかーら! それはムリだって言ってんの! これは俺の“絆の証”なんだよ!」

「何だよ! いっつもいっつもそんなクソダサイ台詞吐いて! いい加減ちゃんと見てよ……!」


 ちゃんと見ろ? コイツは目くじら立てて何を言ってるんだ?


「はあ……とにかく、俺は今日も忙しいんだよ。つーわけで、俺は帰るぞ……って」


 もう! もう! なんでコイツは俺が帰ろうとするとそうやって通せんぼするの!?


「中岡ー……俺に構ってないで、アッチ、なんとかしたほうがいいだろ……」


 俺は窓際後ろの席にクイ、と顎で指し示す。


 そこには、帰り支度をしている芹沢が、クラスの女子達に指差されながら笑われていた。


「アレ、お前の“幼馴染”だろ? バカにされてるけど、助けてやんなくていーの?」

「……ねえ、ソレやめてって言ったよね?」


 そう言うと、中岡は露骨に顔をしかめた。


「大体たまたま家が近所で、うちの両親がアイツの親と仲がいいから付き合いがあるだけで、私は別に“幼馴染”だなんて思ってないし」


 ウーン……何というか、拗らせてるなあ……。


「でも、そんなこと言ってると“幼馴染ざまぁ”されたり、“もう遅い”って言われたりするぞ?」

「何だよソレ」

「アレ? 知らない? ネット小説である話なんだけど……」


 俺はスマホを取り出して、いつも見てるウェブ小説サイトのトップページを表示する。


「ええと……ホラ、これ」


 俺はスマホを操作してラブコメ部門のランキングページに移動し、それを中岡に見せた。


「へー……」


 そこには。


『① 今まで疎遠だった幼馴染が、陰キャな僕が実はトップアイドルだと知ってすり寄って来るけどもう遅い』


 と、表示されていた。


「な?」

「『な?』じゃないよ! 幼馴染がトップアイドルだったからって関係ないし! すり寄らないし!」


 アレ? 中岡、余計にヒートアップしたぞ?


「それを言うなら、『ただの近所の同級生が、勝手に私の幼馴染だと勘違いしてるけど勘弁して欲しい!』っていうのはないの!?」

「その小説のどこに需要があるんだよ!? つーか恋愛皆無だろソレ!」


 全く……これはラブコメ部門なんだから、恋愛なかったら詐欺だろーが。


「はあ……とにかく、アイツは私にとって“幼馴染”じゃないから……ホントに、誰が久坂にそんなデマ教えたんだろ……」


 中岡が額を押さえ、深く溜息を吐いてうなだれる。


 けど……アレ? なんで俺、中岡と芹沢が“幼馴染”って知ってたんだっけ?


 まあいいや。


「おっと、それどころじゃねえ! 俺は忙しいからもう行くぞ! じゃな!」

「あ……」


 俺は慌ててカバンを肩に掛けると、そそくさと教室を出た。


 寂しそうな表情で手を伸ばす、中岡に気づかないフリをして。


 ◇


「フンフンフーン♪ 今日はシチュー♪ 寒い季節にピッタリな、あったか~いクリームシチュー♪」


 俺は鼻歌交じりに駅前の商店街を歩く。


 やー、もうすぐ本格的な冬を迎えるこの時期、食卓を彩るのはそう! シチューをおいて他にはない!

 中でも、クリームシチューこそ究極なのだ!


 そんなゴキゲンな状態でフラフラとねり歩いていると。


「んお? なんだ?」


 商店街の奥にあるラーメン屋の前に、人だかりができてるなあ。


 俺はチョット興味が湧いて、野次馬よろしくその人だかりの輪に加わる。


 すると。


「いやー! どうでしたか“沖田”さん、ここのラーメンは!」

「あ、ハイ。スープが濃厚で、すごく美味しかったです!」


 人だかりの輪の中心に、今話題の若手俳優“沖田晴斗(はると)”がいた。

お読みいただき、ありがとうございました!


明日も二話投稿し、それ以降は毎日一話、夜に投稿していきます!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[一言] ただの近所の同級生が、勝手に私の幼馴染だと勘違いしてるけど勘弁して欲しい 揶揄系でありそうな作品で需要はあると思います。 この作品書いてる時点で作者さんも思ってるでしょうけどね。 ヒロイン…
[気になる点] もう、結構わかりやすくアプローチされてんのねw しかも若干気付いてるしw [一言] おっ、現れたな沖田!
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