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久坂大和は今日も“御前様”に絡まれる。

新作、始めました!

どうぞよろしくお願いします!

「はよーっす」


 俺は教室に入るなり、独り言のように朝の挨拶をする。


「ふああ……」


 カバンを机の横に掛けると、席に座るなり俺は大きくあくびをした。


 ウーン、やっぱり深夜三時まで妻達の相手をしてたのは失敗だったな。


 すると。


「フム……相変わらず眠そうな顔してるな」


 現れたのは、クラスメイトの斎藤だった。


「ウルセー、俺の奥さん達がなかなか寝させてくれねーんだよ」

「ほう……? 昨日は誰がお前の相手をしたのだ?」

「フン、聞きたいか?」

「ああ、ぜひ」


 そう言うと斎藤は俺の傍に寄り、耳を傾けるが……うん、男に近寄られても俺の心はダメージを負うばかりだ。


「昨日はな『二年四組の“久坂(くさか)大和(やまと)”さん、至急、風紀委員会室に来てください』……またか」


 俺は校内放送を聞いてガックリとうなだれる。


「おい久坂、今日も“御前様”がお呼びだな」


 そう言いながら、ニヤニヤと俺を眺める斎藤。


「ウルセー……毎朝付き合わされる俺の身にもなれ」

「仕方あるまい。どうやら“御前様”は、久坂にご執心みたいだからな」

「それが迷惑なんだっつーの!」


 とはいえ、ここで無視して呼び出しに応じなかったら、後で余計面倒な目に遭うことは間違いない。


 俺は渋々その重い腰を上げると……クラスの連中が一斉にコッチを見てニヤニヤしてやがる……。


「はあ……とりあえず、行ってくるわー」

「うむ」


 俺は手をヒラヒラさせながら教室を出ようとしたところで。


 ——ドン。


「おっとと」

「あ……ゴ、ゴメン……」


 同じくクラスメイトの“芹沢(せりざわ)悠馬(ゆうま)”の肩が俺にぶつかった。


「あー、いいよいいよ。俺は急いでるんだ」


 俺は振り返りもせずに、そのまま教室を出た。


 しっかし芹沢の奴、いつも思うけどホント存在感ねーな。

 おかげで俺も、ぶつかるまで全く気づかなかったぞ。


 って、それどころじゃねーな。

 早く行かねーと、何言われるか分かったもんじゃない。


 俺は廊下を足早に進み、校舎の二階にある風紀委員会室、通称“桜の園”の扉の前までやってきた。


「あー……またコレのことでとやかく言われんだろーなー……」


 そう呟くと、俺は自分の左手を見やる。


「はあああああ……入るかー……」


 俺は深い溜息を吐くと、意を決して扉を開けた。


「待っていたよ」


 すると、風紀委員会室の窓際一番奥で腕組みしながら、俺を呼び出した張本人、風紀副委員長の”中岡悠里(ゆうり)”が不敵な微笑みを浮かべていた。


「『待っていたよ』じゃねーよ。毎日毎日校内放送で呼び出しやがって。しかも、百パー私用じゃねーか」


 俺は半目で睨んでやると、中岡の奴は軽く溜息を突いた後、ツカツカと俺の前までやってきた。


「久坂、だったら私に呼び出されないように、ちゃんと校則を遵守したらどうかな?」


 そう言って、中岡はツンツン、と俺の左手を指差した。


「はあ……だから言ってるだろ。コレは俺と愛する妻達との絆の証だって」

「はあ……だから言ってるよね? ソシャゲのキャラを妻呼ばわりしながら左手薬指に指輪つけてこないでって!」


 中岡は呆れた表情でビシッ! と俺を指差す。


 だが、毎度のことながら、それだけは聞き捨てならねーぞ!

 彼女達の悪口は、誰であっても許されるものじゃないのだ!


「彼女達に謝れ!」

「なんでだよ! いい加減、二次元から離れてよ!」


 何言ってやがる。

 二次元こそ至高じゃねーか。


 彼女達はいつもこの俺を癒してくれる、最高のパートナーなんだぞ。


「大体、俺なんかよりよっぽど校則違反してる奴は山ほどいるだろーが! ソッチ取り締まれよ!」

「ハ、ハア!? アクセサリー付けてる生徒がいると、風紀が乱れるの! とにかく、ちゃんと外さなかったら無理矢理没収するからね!」

「横暴だ!」


 とまあ、ここまでが平日の朝のテンプレだったりする。


 中岡もやいのやいの言う割には、一度もこの指輪を取り上げられたことねーし。


「まあいいや……で、今日はこれで終わりか?」

「……うん。不本意だけどね」


 中岡は頬を思い切り膨らませ、プイ、とそっぽを向いた。


「だったら、俺は教室に戻るぞ」


 そう言って踵を返して風紀委員会室を出ると、俺は来た時と同じルートを足早に……行こうと思ったけど、思い直して少しゆっくり目に歩く。


「……なあ、中岡さんや?」


 相変わらず頬を膨らませたまましれっと俺の隣を歩く中岡を見やる。


「……何?」

「同じクラスなんだからさあ、この朝のやり取り、教室でやればよくね?」

「ハ、ハア!? そ、そんなこと、できる訳ないよね!? よね!」


 中岡の奴は急に顔を真っ赤にさせながら、手をバタバタとさせて抗議する。


「や、だけど毎朝毎朝、校内放送使って俺を呼び出すほうが問題じゃね?」

「いいの! ちゃんと木戸先輩にも許可とってあるし!」

「あの人、風紀委員長のくせに何やってんの!? むしろ後輩をちゃんと取り締まれよ!」


 全くあの人は……。


「そもそも! キミがその指輪をしてくるのがいけないんだよ! ちゃんとソレを外して登校してきたら、私も校内放送使って呼び出したりしないから…………………………多分ボソッ

「おい、聞こえてるぞ」


 多分ってなんだよ、多分って。


「まあいいや。俺は “セツナたん”のお相手で疲れてるんだ。頼むから今日はもう絡んでくるなよ」

「な、なんだよ! …………………………久坂のバカ(ボソッ)」

「んあ?」

「何でもないっ!」


 ハア……。


 俺は昨日の疲れもあってか、頭をポリポリと掻きながら自分の席に着くなり突っ伏した。

お読みいただき、ありがとうございました!


とりあえず、今日と明日は二話投稿し、それ以降は毎日一話、夜に投稿していきます!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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【俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ】
― 新着の感想 ―
[一言] ツンデレを見ましたか。これは楽しそうです
[気になる点] お互いにぶつかったのに片方だけが謝り いいよいいよはなんだか…
[良い点] 二次嫁とのキズナの指輪を 学校にしてくる大和の偉大さに笑いました!! 応援しています!!
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